県の復興道路整備が完了 県道丸森権現堂線(大船渡)下船渡工区の完成で きょう待望の全線供用

▲ きょう全線供用を開始する一般県道丸森権現堂線の下船渡工区

 県が大船渡市大船渡町内で整備を進めてきた一般県道丸森権現堂線下船渡工区(延長2・1㌔)が完成し、28日午前10時に供用を開始する。幅員が狭い区間を改良し、平成23年の東日本大震災津波で発生した地盤沈下による浸水も解消。走行性や安全性を向上させ、今後は水産業振興への寄与などにも期待がかかる。同工区の完成により、県が気仙3市町の21カ所で取り組んできた復興事業の道路整備は震災から11年7カ月余りで完了となる。(三浦佳恵)

 

震災から11年4カ月余経て

 

 下船渡工区は、大船渡町宮ノ前のJR大船渡線BRT専用道の踏切付近を起点とし、終点となる笹崎の大船渡湾冷凍水産加工業協同組合(大船渡ワンレイ)付近までを結ぶ区間。周辺には、市魚市場や複数の水産加工施設などが立ち並んでいる。
 この区間は幅員が狭小で歩道がなく、大型車のすれ違いや歩行に困難をきたしていた。さらに、震災で発生した地盤沈下で満潮時には浸水被害が生じ、通行の妨げになっていた。
 県は同工区を「復興関連道路」として、平成26年度から整備に着手。総事業費は36億円。
 満潮時の浸水を解消するため、地盤の高さは大船渡湾の満潮時水位を上回るT・P(東京湾平均海面)プラス0・62㍍以上に計画して整備。道路の全幅員は9・5~16㍍で、最大幅の場合、2車線を合わせた車道は6㍍、停車帯は3㍍、歩道は7㍍となった。
 防潮堤整備などの復興事業と一体で進め、完成箇所から順次供用を開始。平成29年の終点から100㍍の区間を皮切りに、令和2年には工区内の延べ500㍍区間が、今年3月には起点から1380㍍区間が開通した。
 残る120㍍区間は魚市場南側に位置し、今年3月の完成を予定していたが、隣接する防潮堤整備との調整が必要になり、工期が7月まで延びた。
 スケジュール変更後はスムーズに工事が進み、予定通りの完成を迎えることとなった。28日は午前10時から、車両などの通行が可能となる。
 通行時の支障や浸水被害の解消を図ったことにより、走行性や安全性が向上。これまでに比べて魚市場や水産加工施設へのアクセスがしやすくなり、大船渡の基幹産業である水産業の振興にもつながると期待が高まる。
 県がまとめる「社会資本の復旧・復興ロードマップ」によると、震災後に県が復興事業として気仙3市町で進めてきた道路整備は21カ所。このうち、3年度末までに19カ所が完成し、全線での供用を開始した。
 4年度は下船渡工区のほか、同市赤崎町の県道大船渡綾里三陸線(赤崎工区)で本線と大洞地内の森っこ防集団地を結ぶ取り付け道路(延長330㍍)の整備が行われ、6月30日に完成。下船渡工区の全線供用により、計画した21カ所すべての整備が完了することとなる。
 県大船渡土木センター道路整備課の古舘衛課長は、「下船渡工区はスケジュール見直し後、順調に工事が進んで全線供用を迎えられることとなった。道路のために貴重な土地を提供いただいた地権者の方々をはじめ、関係機関の協力に感謝したい。新たな道路が地域の復興を後押しできればと期待している。また、復興事業が完了できたのは、何より地域住民の方々の理解と協力のおかげ。それぞれの道路が生活道としてはもちろん、地域の産業や観光などの振興に役立てば」と話している。