サンマ長期海況予報「依然として低水準」 昨年上回る来遊量も 水産研究教育機構

▲ 大船渡湾内に係留されているサンマ大型船。来週から出漁準備が本格化する

 国立研究開発法人水産研究・教育機構水産資源研究所は、今年8~12月における道東~三陸海域などでのサンマ漁況の見通しをまとめた。漁期を通じた来遊量は昨年を上回るが「依然として低水準が続く」との見通し。漁場は8~9月は択捉島東沖の公海に形成され、三陸海域への魚群南下は例年より遅れる。数量・金額ともに本州一の座を誇る大船渡の関係者は、昨年は〝大不漁〟に終わっただけに、漁況回復に期待を込める。(佐藤 壮)

 

 地元大型船は来月出漁へ


 長期海況予報は、漁業者や流通加工業者などの効率化や経営安定に活用してもらおうと、毎年この時期に発表。関係試験研究機関による資源調査結果などを踏まえて、漁況は8~12月、海況は8~9月上旬の見通しをまとめている。
 漁況に関しては、漁期を通じて来遊量は昨年を上回るものの、東日本大震災前年の平成22年以前に比べると依然として低水準にとどまる。漁期を通じた1歳魚(漁期中に体長29㌢以上になると予測されるもの)の割合は昨年を下回り、1歳魚の平均体重は昨年よりも10㌘程度少ない100~110㌘が主体と見る。
 8~9月の漁場は択捉島東沖の公海で、10月以降は道東海域以南の排他的経済水域や隣接する公海に形成。三陸海域への魚群南下時期は例年より遅く、10月下旬ごろになる見込み。
 近海の黒潮続流の北限位置はかなり北偏で推移し、親潮第1分枝の張り出しは「かなり南偏~やや北偏」の予測。下北半島沖の暖水塊は停滞する見通しとなっている。
 199㌧の大型船6隻を所有する大船渡市の鎌田水産㈱(鎌田仁社長)では、8月20日(土)の漁解禁に向け、1日(月)から集魚灯の設置作業といった艤装が本格化する。今年は燃油費の節減を図るため、北海道の各漁港には寄港せず、直接大船渡から公海に向かう。
 昨年もロシア海域ではなく、公海の操業が中心だった。鎌田社長(49)は「今年も公海が中心になるのではないか。昨年よりも数量は期待できるかもしれないが、漁場が少しでも近くなり、鮮度の良いサンマを早く水揚げしたい」と語り、例年通り8月下旬の初水揚げに期待を込める。
 全国さんま棒受網漁業協同組合によると、令和3年における全国の総水揚げ数量は、前年同期比38%減の1万8291㌧で、金額は同20%減の113億4976万円。1㌔当たりの単価は620・5円で、前年同期の約1・3倍となった。
 大船渡市魚市場の水揚げは、数量が前年同期比60%減の2471㌧で、平成以降で最低実績に。金額は同39%減の17億829万円で、単価上昇があったものの数量大幅減の影響を補えなかった。
 大船渡は本州で見ても、数量、金額ともトップを維持。一昨年は本州数量に占める割合は34・7%だったが、昨年は大船渡以上に本州各地の落ち込みが大きく、38・9%に上昇した。
 震災前の数量は平成20年が3万400㌧、21年が2万8995㌧、22年が2万1687㌧。震災で同魚市場も大きな被害を受けた23年は1万8438㌧、24年は2万385㌧となった。25年は1万4585㌧に落ち込んだが、26年は2万7133㌧と持ち直した。
 しかし、27年から再び低迷。令和元年以降は、1万㌧台が遠い状況が続く。3年は5700㌧台の平成11年を大きく下回り、平成以降で最低に。昭和51年以来の2000㌧台に終わった。