東日本大震災11年5カ月/警報発令15分以内に退避へ 地震、津波災害時の活動 市消防団がマニュアル改正 県公表の最大浸水想定受け
令和4年8月11日付 1面

東日本大震災の発生から、きょうで11年5カ月。大船渡市消防団(大田昌広団長)は、県が今年3月に公表した最大クラスの津波浸水想定を受け、「地震・津波災害時の消防団活動における安全管理マニュアル」を改正した。津波注意報等の発令後、団員が安全な高台などに退避するまでの時間を15分以内とする「15分ルール」などを盛り込み、危険と隣り合わせで活動する団員の安全を確保。有事に団員が率先して早期避難を行う仕組みを整備し、地域住民らに命を守る行動の重要性を改めて呼びかけていく。(菅野弘大)
市消防団では、震災の経験を教訓とし、平成24年8月から地震、津波災害時の退避完了までを含めた団員の活動可能時間を「津波警報、注意報の発表から20分以内とする」(20分ルール)と定めたマニュアルを運用。過去10年間で20分ルールが適用された場面は、本県に津波注意報が出された同28年の福島県沖地震など、8回に上った。
今回の想定では、満潮位、地盤沈下、地震、津波による構造物、防潮堤の破壊などの悪条件下を前提に浸水区域や水深、到達予想時間などを公表。大船渡市内では、津波の第一波到達時間が三陸町綾里の白浜海岸で17分と、唯一20分を切る予想となっており、これまで運用してきた20分ルールでは、団員の安全確保が難しい状況となった。
同団ではこれを受け、5月に開いた4役会議で対応を協議。20分ルールについては、さまざまな意見が出されたが、大田団長(55)は、震災時に津波が来る瞬間まで避難誘導にあたった団員3人が殉職した事実を教訓として、「団員の命が失われることがあってはならない」と強い意思を示し、15分に短縮することを決め、6月の幹部会議で承認後、7月から運用を開始した。
改正したマニュアルでは、震度5弱以上の地震発生で各分団員が所属消防屯所へ参集し、巡視や広報、避難誘導などの活動にあたる。その後、津波警報、注意報が発令されたタイミングからルール適用となり、15分以内に安全な場所に退避を完了する。
市内で地震が観測されない遠地地震に伴って注意報などが発令された場合は、津波到達予想の1時間前に指揮本部を設置し、活動方針や15分ルールの適用も踏まえた活動時間を決める。警報等の発令時にすでに津波が到達している、または到達が予想される時は、ルール適用外となる。
運用開始にあたり、団員への周知のほか、先月25日~今月4日まで市内各地で開かれた津波浸水想定に関する住民説明会でも紹介された。
綾里地区を担当する第10分団の佐々木淳分団長(51)は「団員の命を守るためには、とてもありがたいルール」と前置きしたうえで、「退避完了までの時間が15分とはいえ、目の前に逃げ遅れている人がいたら助けないわけにはいかない。ルールも頭に入れながら、臨機応変に対応する必要がある」と語る。
同地区は特に漁業が盛ん。「津波が来るとなれば、漁業者は自分の船を逃がそうと海に向かうと思うが、海に近づけさせないことも、このまちの消防団の役目だ」と見据える。
15分ルールが適用となるのは、市内の浸水域となっている地区だが、団員が仕事などで所属分団以外の地区にいた場合にも、このルールに従って近くの高台や消防屯所に退避することとなる。大田団長は「消防団員も一市民。平常時から地域と連携し、団員が率先して逃げ、命を守る姿勢を示すことで、市民にも『逃げよう』という意識づけができれば。復興の進展で新しい道路ができるなどの変化もある中、地区ごとに課題も出てくると考えられるが、消防団としてできる活動を続けていく」と力を込めた。