2022大船渡市長選/戸田市長「今期限り」勇退表明 各種課題解決に手ごたえ 体力面も理由に

▲ 今期限りでの勇退を表明した戸田市長

 戸田公明大船渡市長(73)=猪川町=は、11日に市内で記者会見を開き、11月20日(日)告示の市長選に出馬せず、今期限りでの勇退を正式表明した。理由には「体力の限界」に加え、公約を一定程度達成したことや、ポスト復興まちづくり推進への手ごたえを挙げた。後継候補については「次の首長を決めるのは市民による選挙」とし、後援会組織とともに擁立は否定した。(佐藤 壮)

 

後継候補の擁立は否定

 

 会見には、水野公正後援会長が同席。戸田市長は「市役所での記者会見を通じて市長選への態度を聞かれ続け、選挙3~6カ月前の適切な時期に表明するとしてきたが、本日に至った。11月の市長選には出馬しない」と語った。
 理由として▽体力の限界を感じ、4期目は全力疾走できなくなったと実感する▽3期目に向けた選挙時の公約を一定程度達成していると判断した▽ポスト復興まちづくりに対して、各種計画を策定した──を挙げた。勇退の意思は今年5月までに固め、その時点で後援会幹部らに明かしていたという。
 後継候補について問われると「決めるのは、市民による市長選挙。ポスト復興まちづくりに向けて、多くの計画が策定されている。新しい市長もそれに沿って動くと思う」と述べた。水野会長も後援会組織としての後継擁立を否定した。
 吉浜地区の市有地で計画されている太陽光発電事業に関しては、3期目に入り動向が注目され続けてきた一方、県の環境アセスメントの要否判断が進まず、市による「総合的判断」が持ち越しになっている。残り任期が3カ月余りとなった中での方向性を問われ「事業者と行政の間で協議している事項があり、その結果次第。それが見えない段階であり、何とも申し上げる段階にはない」と語った一方、地球温暖化対策推進などを掲げて事業意義を強調した。
 退任後については「今の仕事を最後の最後まで続けていく。その気持ちしかない。その後の具体的な動きは考えていない」と回答。政治や公職にはかかわらない意向も明かした。
 体力面では「仮に4期目とすれば、その途上で後期高齢者になる。私自身、時折、体力の限界を感じる時がある。これでは、最後まで全力疾走できないと判断した」と説明した。
 1期目以降、多様な地域課題の克服や市民所得向上を目指した取り組みに着手し、一定の実現に手ごたえを示した。東日本大震災の復旧・復興事業では「3000軒もの住宅が大きな被害を受け、一番難しかったのは住宅の高台移転と感じている」としたが、被災地周辺の高台に〝差し込み型〟の防災集団移転促進事業を取り入れた歩みなどに充実感をにじませた。
 戸田氏は三陸町吉浜出身。平成18年に大手建設会社を退職して市長選に初出馬し、当時の現職との一騎打ちに敗れた。22年に再び挑み、新人三つどもえの選挙戦を制して初当選。9代目の市長となった。
 23年の震災を受け、10年間にわたる市復興計画を策定し、復旧・復興事業を指揮。26年、30年の市長選は、いずれも新人との一騎打ちを制した。
 市長在任が10年を超えたのは、2代目の鈴木房之助氏、6代目の臼井勝三氏、8代目の甘竹勝郎氏に続き4人目。戸田氏の任期は、今年12月2日(金)までとなる。
 11月20日告示、27日(日)投開票の日程で行われる市長選には、いずれも新人・無所属で、イベント企画業代表の鈴木茂行氏(52)=猪川町=と、元会社役員の村上守弘氏(63)=同町、前市議会議長の渕上清氏(64)=盛町=の3人が立候補を予定。この他にも出馬検討や擁立の動きがあり、混戦が予想される。