「地域交流」で効果幅広く wizのインターンシップ 住民、移住者らとの対話重視(別写真あり)
令和4年8月25日付 1面

大船渡市などに拠点を構えるNPO法人wiz(ウィズ、中野圭代表理事)は8~9月にかけ、気仙両市の企業や法人で大学生が職場・業務体験を行う「IWATE実践型インターンシップ」を運営している。県外の学生5人が参加し、本年度は初めて地域交流活動として、震災学習や住民、移住者との対話機会を盛り込んだ。受け入れた事業所や学生双方の充実だけでなく、地域の誇りを共有し、地域側からの魅力発信を促す機会創出も見据えている。(佐藤 壮)
学生滞在通じ魅力発信へ
ウィズは7年前からインターンシップを手がけ、主に被災企業が抱える経営課題解決に取り組む「実践型」を展開。毎年1カ月以上にわたり、水産加工や宿泊・観光、情報通信、まちづくりなどの企業が受け入れ先となってきた。これまで、360人を超える学生が参加している。
本年度は、今月8日からオンラインで事前研修を行い、同中旬に各学生が現地入りした。9月末まで活動する。
大船渡市のアローリンクス㈱(川原夕輝代表取締役)では、京都コンピュータ学院2年の小林右京さん(22)=大阪府出身=と立教大学2年の小澤聖奈さん(19)=千葉県出身=が就業体験に臨み、ウェブや情報通信技術を生かした地域おこしに取り組んでいる。
同市のサンコー食品㈱(小濱健社長)には慶應義塾大学2年の木下翔さん(21)=神奈川県出身=が入り、主力製品であるイカ加工品の発信を進める。
陸前高田市のNPO法人高田暮舎(岡本翔馬理事長)では、宇都宮大学4年の木津谷亜美さん(23)=青森県出身=と青山学院大学4年の大賀真帆さん(21)=東京都出身=を受け入れた。空き家活用に関する活動にあたる。
実践型インターンシップでは初となる地域交流活動は23、24の両日に実施。初日は震災学習として陸前高田市広田町の長洞元気村を訪れたほか、町内の民家で夕食を囲みながら交流を深めた。
24日は大船渡市魚市場などを見学後、大船渡町のキャッセン大船渡内にあるコワーキングスペース「OFUNATO DX_HUB(ディーエックスハブ)」を訪問。東京都から移住し、アローリンクスに勤務する川面将輝さん(25)と長野県出身で今春から地域おこし協力隊として市内で活動する臼山小麦さん(24)から、仕事や暮らしぶりなどを聞いた。
同スペースの管理人も務める臼山さんは、食や人柄など大船渡の魅力を伝えたほか、さらなる移住者増に向けて「暮らせば大船渡を好きになる人が多いと思う。そんな仕組みをつくっていきたい」と語った。地域住民とのかかわりや、職場以外での人間関係構築なども話題となった。
学生たちは終始、熱心な表情で聴講。時折、自らの思いや経験を語り、質問も寄せるなどして、地域に溶け込みながら仕事に励む魅力を感じ取った。
小澤さんはこれまで、アローリンクスが開発を手がけた一般社団法人大船渡地域戦略の新アプリ「大船渡さんぽ」の普及に向けた活動を通じて、地域の実情に理解を深めてきた。「きょうの地域交流で、改めて人と人とのつながりの大切さや距離の近さを感じた」と語り、笑顔を見せた。
学生に同行したウィズの八田浩希コーディネーター(39)は「業務体験に加え、地域の役に立ちたいという思いをはぐくむために、交流を入れたいと考えていた。震災から10年以上が経過し、地域の誇りを発信する機会が減っているのではないか。学生たちが滞在することで、地域の活気や良い効果が生まれる活動も進めたい」と話していた。