市が自動運転実験 実施へ 9月10~30日 高田松原津波復興祈念公園 園内の移動手段構築目指す 震災遺構など周遊

▲ 自動運転の小型電気バスを使い実証実験に乗り出す(車両所有者の㈱ティアフォー提供)

 陸前高田市は9月10日(土)~30日(金)、高田松原津波復興祈念公園内で、19㌔以下で走行する小型の電気バスを活用した自動運転サービスの実証実験を行う。園内の東日本大震災遺構などを周遊し、誰でも無料で乗れる。休日は案内係のパークガイドが同乗する。広い祈念公園内に点在する震災遺構を結ぶ移動手段の確保は、震災の教訓を伝えるうえでの課題となっている。実証実験を踏まえ、来年度中に一部ルートで運行を始め、令和7年度の本格運行を目指す。(高橋 信)

 

来園者は無料で乗車可能


 実証実験は10人乗りの1台を使い実施する。計測機とカメラで取得したデータから作成した高精度3次元地図データを用いて自動運転する。運行業務は、測量・土木関連ソフトウエア開発大手のアイサンテクノロジー㈱(本社・愛知県名古屋市)が担い、運転手とオペレーターが乗り安全性を確認する。
 車両は、道の駅高田松原を発着点に、公園西側にある震災遺構の奇跡の一本松、旧気仙中校舎を行き帰りで経由する。
 距離は片道約1・3㌔。平日は1日12便を運行し、1往復20分。乗客定員は7人で、予約不要で利用できる。
 土・日曜日、祝日もルートは同じだが、奇跡の一本松、旧気仙中校舎でそれぞれ降車し、同乗したパークガイドから遺構に関する説明を受ける。運行本数は1日5便で、1便当たりの所要時間はガイドを含めて51分。定員は6人で、当日の現地予約が必要となっている。
 国、県、市が一体となり整備した津波復興祈念公園は、令和元年9月に一部オープンし、昨年12月に全面供用を開始。市によると、今年3月までの来園者は約127万人と、県内外から大勢の人が訪れている。
 敷地は約130㌶と広大で、東西で約7㌔の距離があるが、移動手段は徒歩のみのため、園内に5カ所ある震災遺構など、施設を限られた時間ですべて見学するのは困難な状況が続いている。
 こうした中で市は、震災の教訓を効果的に伝えようと、公園を起点とした自動運転サービスの社会実装を検討する地域実装協議会(会長・舟波昭一副市長)を立ち上げ、昨年11月から協議している。
 実用化に向けて課題を探る実証実験は、来年1月も実施する。費用は7700万円。本格運行時は、公園東側にある下宿定住促進住宅などの震災遺構を巡る約3・1㌔のコースを想定。将来的には市内公共交通への導入を目指す。
 9月1日(木)~9日(金)はテスト走行とし、10日午前9時から現地で出発式を行う。市は自動運転車とは別に、年度内に7人乗り電動カートを購入し、公園内での運行を計画している。
 舟波副市長は「来園者が困らないよう、実験を通じて新たな移動手段を模索していきたい。本格運行後は段階的にエリアを拡大し、将来的には市中心部でも自動運転サービスを実装するなどしながら、陸前高田に合った移動手段にしていきたい」と見据える。