除草ロボットで省力化 リンゴ圃場での実証公開 県のスマート農業推進事業(動画、別写真あり)

▲ 除草ロボットによる実証を生産者らに公開

自動で圃場内を走行し、草を刈っていくロボット

 県による「気仙地域スマート農業現地研修会」は8日、陸前高田市米崎町内のリンゴ圃場で開かれた。本年度、県は気仙地域でロボットやICT(情報通信技術)を生かしたスマート農業技術の導入実証に取り組んでおり、今回は傾斜果樹園地での草刈り作業を担い、栽培の省力化を図る除草ロボットの実証を地元生産者らに公開。参加者たちは、ロボットの機能や雑草の刈り取り状況などを確認し、その有効性に理解を深めた。(三浦佳恵)

 

生産者ら参加し研修会

 

 スマート農業は、農業従事者の減少で限られた労働資源を最大限に活用する有効な技術。一方、気仙地域ではなかなか導入が進んでいない現状があり、県は本年度、地元農業者の協力を受け、導入しやすく関心が高いスマート農業技術の実証実験に取り組んでいる。
 今回は、除草ロボットによる傾斜果樹園地での草刈り作業省力化。果樹栽培には人手を要する作業や収穫などの重労働が多いことから、省力化・軽労化につながる機械などを導入し、その効果を調べる。
 県によると、果樹の圃場では4月から10月にかけ、3週間に1回程度のペースで草刈り作業が必要になる。平地では乗用の草刈り機を用い、果樹の幹回りといった細かい部分は人力での刈り取りや除草剤などで対応するが、生産者には手間がかかる作業の一つだという。
 実証には、花巻市の和同産業㈱が開発した除草ロボットKRONOS(クロノス、販売価格税抜き45万円)を使用。今回は米崎町内のリンゴ圃場とブドウ圃場に1台ずつ導入し、いずれも5月27日~10月下旬まで行う。
 研修会は、大和田正人さん(71)が所有するリンゴ圃場の実証現場で開催。生産者ら約30人が参加し、県大船渡農林振興センター農業振興課の職員と大和田さんが説明した。
 大和田さんの圃場では、「ふじ」や「つがる」などのリンゴを生産。今回は約50㌃の圃場のうち、約30㌃の区画に専用のエリアワイヤを張り、その中でロボットが草刈りを行っている。
 ロボットは、100㌾の家庭用電源で1時間充電すると、1時間の稼働が可能。障害物を検知しながら自動で園地内を走行し、草を刈り取る。電力が10%まで低下すると自力で充電ステーションに戻り、充電を行う。作業の開始、停止にはスマートフォンアプリを使う。
 実証では、午前6時から午後6時までの12時間を作業時間に設定。このうち、ロボットは充電時間を差し引いた6時間稼働する。
 大和田さんは、「解消しなければならないトラブルへの対応はあるが、使ってみてかなりいいなというのが実感。仕上がりもきれい」と話し、使用に当たっては、ロボットが走行しやすいよう圃場の清掃を心がけるようアドバイスした。
 同市のNPO法人LAMP(ランプ)で生産を担当する村上計太さん(39)は「知り合いの農家も導入していて、便利だと思っていた。時間の節約になり、むらなく草を刈れるのも魅力的に感じた」と話していた。
 研修会では併せて、収穫や出荷時の重量物の持ち上げ、運搬作業などをサポートする「アシストスーツ」の紹介、実証としての利用の呼びかけも。こちらも生産者らの関心を集めていた。