東日本大震災11年半/はばたけ 地域の未来へ ドローン活用し新事業創出 陸前高田の小山さん(別写真あり)

▲ 震災11年6カ月ドローンを操作する小山さん

 きょうで東日本大震災の発生から11年と半年を迎える。陸前高田市が高田町の中心市街地に整備した「チャレンジショップ」から独立し開業する経営者も出始めるなど、まちなかに明るいニュースも増えてきた。同市米崎町の小山祐樹さん(42)も昨年、ドローンを活用した造園や農地・森林管理などを手がける合同会社ディーエフジーピー(Drone Flight Greening Protection)を立ち上げ、チャレンジショップ内で力を蓄えながら、地域に新しい仕事を創出し、既存事業の可能性も広げようとしている。(鈴木英里)

 

「若者の将来の選択肢に」

 

 小山さんが開業したのは、震災から丸10年を過ぎたばかりの昨年4月。造園業を営む父・芳弘さんのもとで21歳の時から仕事をしていたが、40歳という節目を迎え「新しい挑戦をするには、今が最後のチャンスかもしれない」と独立に踏み切った。
 大きなきっかけになったのは、「震災復興が終わり、今後は仕事が減ってくるだろう」という危機感を抱く中で「マルチスペクトル」カメラを搭載したドローンと出合ったこと。可視光線や赤外線など、波長帯の異なる電磁波を記録できるカメラで、対象物から反射された特定の波長の光をとらえ、植物の生育状況を「色」で見分けることができるものだ。
 農地や園地が広大になるほど、生育状況を人の目で確かめるのには労力がいる。ドローンならば農薬や肥料散布にも使える。マツノザイセンチュウ(松くい虫)から高田松原を守る取り組みにも応用できるかもしれない——。需要は確実に高まっていくと小山さんはにらんだ。自身も椎間板ヘルニアを患った経験があり、さまざまな作業の省力化が必要と感じていた。
 小山さんはすでに無人航空機操縦士として農薬散布の資格なども取得しているが、ドローンは今年12月から免許制(国家資格)になる。取得が難しくなれば、「競争相手があまり増えないだろうという思惑もあった」と笑う。
 もともと機械を触ることが好きだった小山さんの関心はドローンにとどまらず、「レーザースキャン」にまで広がった。レーザーで3次元測量を行うことで、広範囲にわたって樹木の太さと推定樹高を算出できる。森林管理における毎木調査の費用と時間がぐっと抑えられ、ドローンと組み合わせればさらに精密な数字も出せるようになる。
 ずっと携わってきた造園業の知識と新しい技術を掛け合わせ、高齢化や人口減少も見据えた、まだ誰もやっていない仕事を陸前高田につくる——。事業の可能性は、気仙の若者たちの可能性も広げると小山さんは信じ、「若い人が少しでもここにとどまれるよう、自分の仕事が将来の選択肢に入ってくれれば」と願う。
 そのうえで、ドローン講座の開設や、子どもたちを対象とした体験会の開催なども計画。ドローンスポーツといった遊びや楽しみを通し、長い目で見て〝後継者〟を育てられたらという考えだ。
 「小さいころ、パイロットになるのが夢だったことを、創業してから思い出した。だいぶ形は違うが、その夢がかなえられた気がしている」
 笑顔でそう語る小山さんは、今の仕事が楽しくて仕方ないという様子で、思いをふるさとの空にはばたかせている。