戦禍の記憶 継承へ決意新た 甘竹さんに遺族会長表彰 東京での設立75周年式典で 

▲ 天皇皇后両陛下も出席された式典で日本遺族会会長表彰を受けた甘竹さん。戦争の語り継ぎへの決意も新たにしている

 日本遺族会(水落敏栄会長)の創立75周年記念式典が12日、天皇皇后両陛下も出席されて東京都千代田区のホテルで開かれた。席上、県遺族連合会長の甘竹勝郎さん(78)=大船渡市盛町=が会長表彰を受け、式典終了後に両陛下のお招きで懇談にも臨んだ。幼くして父をなくした甘竹さんは、残された家族の悲しみと平和の尊さ、さらには東日本大震災後の被災地お見舞いへの感謝を伝えたといい、「われわれができるのは語り継ぐこと。その決意を改めて胸に刻んだ」と話している。(千葉雅弘)

 

天皇皇后両陛下との懇談も

 

 日本遺族会は、戦後間もない昭和22年に日本遺族厚生連盟として設立し、同28年に改称。英霊顕彰をはじめ、戦没者遺族の福祉向上などを目的に活動している。式典は5年ごとに開いており、在位中の上皇ご夫妻が参加されてきた。
 天皇皇后両陛下が参加されるのは、即位後初めて。両陛下をはじめ、特別来賓として三権の長である岸田文雄首相、細田博之衆議院議長、尾辻秀久参議院議長、戸倉三郎最高裁判所長官が参列。全国の戦没者遺族代表ら約300人が出席した。
 水落会長の式辞に続き、天皇陛下は「子どもの頃から折に触れ、両親をはじめとする方々から戦争についての話を聞いてきました。先の戦争の記憶が薄れようとしている今日、戦争により深い悲しみを経験された方々の平和な世界の実現への強い願いが、戦争を知らない世代に広く伝えられていくことが大切であると考えます」とお言葉を述べられた。
 岸田首相らも福祉向上と平和への思いを込めて祝辞を贈ったあと、両陛下が見守る中で会長表彰が行われ、総代として甘竹さんが受け取った。
 式典終了後、両陛下は水落会長と甘竹さんら4県の遺族会代表者を別室に招いて懇談された。甘竹さんは天皇陛下の質問に答え、父の善治郎さんが遠くフィリピンで亡くなったことを伝え、両陛下や上皇ご夫妻による東日本大震災後のお見舞いに深く感謝した。
 甘竹さんは1歳で父親を亡くし、新聞や牛乳配達をしながらの苦学の末、高校教諭となった。市議を経験したのち、平成6年、市長選で初当選。22年12月までの4期16年間、大船渡の発展のため奔走した。
 市長退任後の25年、市遺族会会長に就任。英霊顕彰にかかる事業などを展開し、26年にはフィリピン戦没者遺族の慰霊巡拝団に本県代表として参加。29年に県遺族連合会会長に就き、現在まで務めている。
 甘竹さんは「全国の方々を代表してただ一人壇上で表彰をいただき、天皇陛下や岸田首相などから直接お祝いのお言葉を賜り、感激の極みだった。陛下の国への思い、そして国に殉じた人々、遺族へのお気持ちを感じた」と当日を振り返る。
 終戦から77年が経過し、日本の総人口の8割が戦後生まれとなって、戦争を体験した世代は高齢化が進む。遺族会活動のほか、気仙歴史文化研究会会長として、郷土を中心に歴史を語り継ぐ活動も精力的に行っている甘竹さん。「悲惨な経験をしたわれわれが、戦争は決して繰り返してはならないということを伝えていかねばならない」と、今後の活動への決意を強くする。