県が11月に解体工事着手 世田米の昭和橋 新橋の完成 7年度末目指す

▲ 周辺の空き家も更地となり、11月に解体工事が着手となる昭和橋

 県は、治水対策の一環として計画している住田町世田米の昭和橋の架け替え事業で、現橋の解体工事に11月から着手する。架け替えに伴う現橋周辺の空き家解体が完了したことから、解体工事が可能となった。準備作業のあと、本格的な解体作業は12月に入ってから始まる見込み。新橋の完成は令和7年度末を目指す。昭和8年の架橋以来90年にわたって地域を結び、住民の生活を支えてきた現橋も、いよいよその姿が見納めとなる。(清水辰彦)


 気仙川に架かる長さ73㍍の昭和橋は、かつて宿場町として栄えた世田米商店街側と、役場などがある川向地区を結ぶ。気仙川沿いに立ち並ぶ蔵並みと調和し、歴史や古き良きたたずまいを感じさせる景観を形成してきたが、一方で通行可能な道幅は3・2㍍と、一般車両のすれ違いができない狭さとなっている。橋脚は7本あるが、その間隔は9・1㍍しかなく、現状では大雨の際に上流からの木などが引っかかり、川の水をせき止めることで浸水被害を及ぼす恐れもあると指摘されている。
 県は詳細設計をまとめる中で、平成30年9月から令和元年10月までの間、専門家や地域代表らによる昭和橋景観検討委員会を計5回開催。デザインコンセプトには「世田米の中心にて住田町の歴史と文化を象徴し、地域とともに新たな歴史をはぐくむ橋」を掲げ、機能だけでなく住民生活や景観との調和も重視してきた。
 新しい橋は、鋼桁とコンクリートを合成したものを用いて建設。橋長は72㍍、幅員は7・8㍍、橋脚は1本で、構造上で必要な幅は確保しつつも、むやみに大きくすることは避け、橋上部に合わせた形状で整備する。総事業費は約11億円。
 架橋位置は現行と同じ場所で、令和2年度には現橋の下流側約200㍍地点に延長66㍍、幅2・6㍍の歩行者専用仮設歩道橋を設置。仮設歩道橋は、現橋の解体着手後に通行開始となる。
 県はこれまで、新橋設置に向けた周辺の用地取得も進めてきた。今年9月には川向地区側のたもとにあった空き家が解体され、現橋の解体工事が始まることになった。
 解体工事は来年4~5月には完了する見込み。新橋設置の工事は、気仙川の稚魚放流時期やアユ漁解禁期間を避けながら進めていくこととしている。
 県は今後、解体工事着工前に地元住民向けに工事に関する説明会を開く予定。県大船渡土木センター住田整備事務所の砂川智次長は「ご不便をおかけするが、早期に安全に開通させたい」としている。
 地域住民の生活を支え続けている昭和橋。地元の老人クラブ・愛宕喜楽会では、30年以上前から橋や周辺の草取り活動を続けてきた。
 同クラブの佐々木義郎さん(84)は、小学生のころには橋のたもとで友人たちとウナギ捕りを楽しんだ。現在も、アユ釣り解禁期間には橋の近くで竿を振るうなど多くの思い入れがあるといい「昔から親しんだ橋なのでさびしさはあるが、新しい橋も地域に愛されるものになってくれれば」と期待を込める。