清水地区の防潮堤など完成 県が復興事業として整備 津波防災対策の向上へ

▲ あすから陸こう4基の自動閉鎖システムが運用され、復興事業が完了する大船渡港海岸清水地区

 平成23年3月の東日本大震災後、県が災害復旧事業などとして整備を進めてきた大船渡市赤崎町・大船渡港海岸清水地区の防潮堤など海岸保全施設は、30日(金)に水門・陸こう自動閉鎖システムの追加運用が開始されるのをもって事業のすべてが完了となる。これまで工事の調整や悪天候の影響などで工期が延びていたが、防潮堤本体は今年5月に完成。水門と陸こう9基には津波注意報などの発令を受けて遠隔操作でゲートを閉める自動閉鎖システムを導入しており、今回は残る陸こう4基で運用を始める。事業の完了により、津波防災対策が一層向上することとなる。(三浦佳恵)

 

水門等は自動閉鎖に対応


 大船渡港海岸清水地区の海岸保全施設は、赤崎町清水地内から蛸ノ浦地内の海岸沿いに整備。延長820㍍、高さT・P(東京湾平均海面)7・5㍍の防潮堤をはじめ、同システムを備えた水門1基と陸こう9基からなり、全体延長は972㍍ある。
 平成23年度に事業化され、26年3月に着工。蛸ノ浦側から順次工事を進めてきた。
 県が定期的に公表する「社会資本の復旧・復興ロードマップ」によると、大船渡港海岸の復興事業は工程表を示した平成24年7月当時は27年度末の完成を計画。しかし、清水地区は整備箇所の地盤の関係や悪天候によって工事に影響が及んだため、令和3年度末時点のロードマップでは今年6月まで完成時期が延長されていた。
 本年度に入ってからは工事がスムーズに進み、予定より1カ月早い5月20日に防潮堤本体が完成。津波発生時などに備えた避難用階段も設け、津波防護機能を発揮できる状態となった。
 また、防潮堤とともに9基の陸こう(清水1~9号)と、清水川河口部には清水水門も整備。陸こうの大きさは、それぞれ幅が4・5~10・7㍍、高さは4・75~6・3㍍で、いずれも横引きゲート。水門は幅5・68㍍、高さ3㍍あり、上下に開閉するゲートとなっている。
 すべての陸こうと水門には、津波注意報・警報が発令されると遠隔操作でゲートが閉まる自動閉鎖システムを導入。導入に向けた工事も順次進め、すでに水門と陸こう5基(清水1、5、7~9号)は運用を始めている。
 今月30日には、残る陸こう4基(清水2~4、6号)の運用もスタート。これに合わせ、県は10月7日(金)午後2時から清水水門近くの清水8号陸こうで同システムの住民説明会を行うこととしており、地域住民や漁業者らの参加を呼びかけている。
 県大船渡土木センター復興まちづくり課の菅原透課長は「清水地区で水門・陸こう自動閉鎖システムがすべて運用開始となることで、安全・安心の向上が大いに図ることができる。しかし、津波注意報・警報が出たときには、ただちに海を離れるなど身の安全を守る行動をお願いしたい」と話している。
 大船渡港海岸では、8月5日に大船渡町の茶屋前地区でも防潮堤本体が完成。同地区には防潮堤(延長70㍍、高さT・P7・5㍍)や水門1基が設けられ、今後は水門の自動閉鎖システム導入に向けた工事などを進める。
 同センターが管理する同システム対象の水門・陸こうは45基あり、このうち運用開始となるのは清水地区の4基を合わせて39基。残りは茶屋前地区の水門と、野々田地区海岸の普金地区3カ所、永浜地区2カ所の計6カ所となっている。