新産業の稼働開始祝う 「アクアポニックスパークおおふなと」 チョウザメとレタス同時育成

▲ 稼働開始を祝って関係者がテープカット

水槽では現在、1歳魚のチョウザメを育成

 チョウザメ養殖やレタスの水耕栽培を同時に行う施設「アクアポニックスパークおおふなと」の稼働記念セレモニーが29日、大船渡市大船渡町内の現地で開かれた。大船渡浄化センターの未利用地に、センター運営の関連企業などが立ち上げた合弁会社㈱テツゲンメタウォーターアクアアグリ(株屋進社長)が整備。関係者は、新たな産業展開に期待を込めた。
 セレモニーには、合弁会社や市の関係者ら約40人が出席。株屋社長は「農薬や化学肥料を使わず、水も循環利用することで、SDGsの理念や環境保全の農業モデルとなる。努力、工夫を重ねて育て、商品を届けたい」とあいさつした。
 戸田公明市長らが祝辞を述べ、安定生産を期待。株屋社長らによるテープカット後、出席者は計画的に育成管理している5種類のレタスや、水槽内で1歳魚のチョウザメが泳ぐ姿などを見学し、国内最大規模の施設構造に理解を深めた。
 アクアポニックスは「アクアカルチャー(養殖)」と「ハイドロポニックス(水耕栽培)」を組み合わせ、魚と植物を同じシステムで同時に育てる新しい農法。魚の排泄物を水中のバクテリアが植物の栄養素に分解し、植物はろ過フィルターの役割を果たすことで、浄化された水が魚を育成する水槽に戻る。
 盛川河口部に位置する浄化センターは、家庭や工場などでの排出水が下水管を通じて集まる終末処理場。大船渡下水道マネジメント㈱が浄化センターの施設改良付包括運営事業を受託している。
 既存施設の改良で処理能力の増強を進め、将来的に予定していた処理系列の増設が不要となった。このため、同マネジメント側が未利用地活用の一環で提案。浄化センターの管理棟や水処理施設の西側に、鉄骨造りの温室約2000平方㍍を整備した。
 レタスは10月下旬以降の出荷開始を目指し、県内の飲食店、スーパー、道の駅などとの取り引きを見込む。1株約80〜100㌘で、最大で月間4万株程度まで増やせるという。
 チョウザメは最大2000匹飼育可能で、数年かけて育てる。メスから取れる卵はキャビアの加工に用いられるほか、オスも含めて身の引き合いも多く、大船渡における新たな水産加工資源として注目される。現在の雇用は地元採用の5人で、順次増やす方針。
 施設内は、水の循環システムが常に稼働し、浄化センターとは独立した運営で、同センターの処理水は入れない。下水道事業は近年、人口減少や技術革新に伴い、当初確保した用地が余る事例が増え、全国的にも未利用地の有効活用策として注目されている。