3年ぶり 修学旅行受け入れ 民泊 長野県の高校生176人
令和4年10月1日付 6面

陸前高田市の民泊事業の窓口を担うNPO法人・SET(セット、三井俊介理事長)は9月28、29の両日、民泊利用の長野県立赤穂高等学校(久保村智校長)の修学旅行生176人を受け入れた。修学旅行生の受け入れは、新型コロナウイルス流行後初めてで3年ぶり。市内55家庭の協力のもと、生徒たちが岩手沿岸ならではの暮らしを体験し、心にとどめた。(阿部仁志)
同校2年生は、27日から3泊4日で東北3県(岩手、宮城、福島)を回る修学旅行を実施。この中で同市の民泊を利用した。
28日は、高田町の市スポーツドームで「はまって会」と銘打った対面式を実施。各受け入れ家庭が初対面の生徒たちを温かく迎え、それぞれの家に車で移動した。
生徒らは1家庭につき3~5人で行動。夕飯時には、海産物や自家栽培の野菜、米崎りんごなど同市の「家庭の味」を味わったほか、受け入れ家庭の家族の話や生徒たちが住むまちの話などで言葉を交わした。11年半前の東日本大震災の教訓について聞いた生徒もおり、家庭ごとに事情の異なる被災の現実を真剣に受け止めた。
一夜明けた29日朝には、スポーツドームに生徒と受け入れ家庭が再び集合。お別れ式の「ほんでまんず会」が開かれ、短い時間ですっかり打ち解けた様子の生徒と市民が別れを惜しんだ。
赤穂高の平井美椛さんは「普段は山に囲まれた場所に住んでいるので、海があるまちならではの体験がたくさんできた。民泊先の〝おばあちゃん〟との会話も楽しくて、いつかまたこの場所に帰ってきたい」と笑顔を見せた。
平井さんら女子生徒3人を受け入れた広田町の村上とよみさん(73)は「孫のようにかわいい子たちで、楽しい時間を過ごせた。大切な命を預かり、無事に役目を果たせてほっとしている」と話していた。
同市の民泊事業は平成28年度から本格化。民泊を利用する中高修学旅行生や個人、団体の受け入れを推進し、利用側は防災学習や地方での生活体験などに、市側は民泊をきっかけにした交流・関係人口拡大などにつなげている。
令和元年度は利用人数が約2500人と過去最多を更新したが、2年度は新型ウイルスの影響で受け入れを中止。事業の委託先が一般社団法人・マルゴト陸前高田からSETに切り替わった3年度も、修学旅行生の受け入れを断念せざるを得ない状況となり、個人などでの利用は延べ数(1泊につき1人とカウント)で約40人にとどまった。
利用者と受け入れ家庭双方が安心して交流できるよう民泊の独自のガイドラインを作成しながら準備してきた本年度は、3年ぶりに修学旅行生の受け入れを再開。4月から9月末時点での受け入れ人数は、修学旅行生以外の利用も含め延べ約300人。数百人規模の修学旅行生受け入れは今回の赤穂高校のみで、年度内は今後30人ほどの利用が予定されているという。
SET職員で民泊担当の戸谷咲良さん(24)は「ここから再スタートするという思い。コロナ禍という厳しい状況の中でも協力していただいている受け入れ家庭のみなさんに感謝し、また前進していきたい」と話している。