東急不動産 最大20基の風力発電計画 氷上山含む気仙両市境部に 環境配慮書を公開
令和4年10月7日付 1面
大船渡市と陸前高田市境の氷上山を含む一帯で、大規模な風力発電事業が計画されていることが分かった。大手総合不動産会社の東急不動産㈱(東京都、岡田正志代表取締役)が進め、事業実施想定区域は氷上山を含む約3547㌶。風力発電機の設置予定範囲は約1478㌶に及び、最大20基を整備し、出力は最大11万㌔ワット程度を見込む。令和8年の着工を予定し、4年程度の工事、試運転期間を経ての正式稼働を見据える。11月9日(水)まで計画段階環境配慮書を縦覧し、意見を受け付ける。(佐藤 壮)
令和8年の着工目指す
東急不動産は、平成26年から再生可能エネルギー事業を展開。宮城県気仙沼市でも大規模な風力発電を計画している。
環境影響評価法に基づく計画段階環境配慮書は、事業内容が固まる前の段階で、環境に配慮しなければならない事項を取りまとめたもの。縦覧を通じて、住民らからの意見を受け付ける。
配慮書によると、事業実施想定区域は両市境周辺=別図参照=の約3547㌶。最大20基を見込む風力発電の設置予定範囲は約1478㌶で、氷上山の山頂部などを含む。
風力発電機1基当たりの出力は4200~5500㌔㍗程度。現段階では3枚翼のプロペラ型を想定し、東北電力ネットワーク㈱の特別高圧系統に連系する。
着工は令和8年を予定し、資機材搬入やアクセス道整備、基礎工事、風力発電機の据え付け、電気工事などに42カ月を見込む。その後、半年程度の試験運転を行い、営業運転を始める。
計画地は、年平均風速が8㍍で「好風況が見込まれる」と判断。資機材輸送に関しては、大船渡港から国道45号や同107号の既存道路を活用することで道路新設に伴う拡幅面積低減を図る。
検討対象エリアは、三陸復興国立公園や高田松原鳥獣保護区、陸前高田市箱根山鳥獣保護区を除外。さらに、砂防指定地や土砂災害警戒区域は風力発電機の設置予定範囲から除き、居住範囲からは少なくとも500㍍以上離れている範囲となる。
調査や予測に関しては大気環境や動植物、生態系、景観、人と自然との触れ合い活動の場などに大別。
このうち、景観では氷上山が区域に含まれ、直接的な改変が生じる可能性に言及する一方で、「主要な眺望点の展望施設の状況や眺望目的に利用される場所を調査し、風力発電機の配置を検討」「樹木の伐採を限定し、改変面積を最小化することを検討する」と記載している。
東急不動産では同事業の目的について「エネルギー自給率に貢献し、エネルギー需給を改善するため、環境への負荷が少ない風力発電所を設置し、再生可能エネルギーの供給や地域活性化に貢献したい」と掲げる。
さらに「住民の方々から話を聞く中で、氷上山は信仰があつく、地元にとって大切な山であるとの認識を持っている。環境アセスメントを通して、さらに住民意見を聞きながら風力発電の設置など慎重に検討していきたい」としている。
配慮書とその要約版は、県大船渡地区合同庁舎県民ホールや大船渡市役所の市民環境課、同三陸支所、陸前高田市コミュニティホール、住田町役場交流プラザで公開。意見書も受け付ける。
同社再生可能エネルギー事業「ReENE(リエネ)」を紹介するホームページでも、配慮書や意見記入用紙などを公開。同社再生可能エネルギー第一部環境アセスメント担当(TLC_Assessment@tokyu-land.co.jp)あてのメールでも意見を受け付ける。