集う喜びも胸に舞台へ 民俗芸能大会へ稽古重ねる 板用肩怒剣舞保存会 県文化財指定受け初出演(別写真あり)

▲ 北海道・東北ブロック民俗芸能大会に向け、連夜の稽古を重ねる板用肩怒剣舞保存会

 大船渡市日頃市町の板用肩怒剣舞保存会(大津英夫会長)は、16日(日)に青森県三沢市で開かれる「第64回北海道・東北ブロック民俗芸能大会」(同県教委、同大会実行委主催)へ、本県を代表して出演する。同剣舞は平成30年に県無形民俗文化財指定を受け、保存会は一昨年に同大会で舞を披露する予定だったが、新型コロナウイルス拡大の影響で見送りに。地元での活動も縮小を余儀なくされてきた中で、大舞台に立つ機会をふたたび得た。踊り手たちは集う喜びも感じながら、連日の稽古に汗を流している。(千葉雅弘)

 

 板用肩怒剣舞の成立は1752年(宝暦2)とされる。壇ノ浦の戦いで滅んだ平家の一族が、御仏の経文と高僧の法力により、次々と成仏していく様を舞踊化したものといわれる。装束の肩の縁取りが目立って盛り上がっていることから「肩怒」の名で呼ばれる。昭和44年に市無形民俗文化財、平成30年に県無形民俗文化財の指定を受けた。保存会には板用地域の全36世帯が所属し、伝承活動に取り組んでいる。
 県文化財指定を機として、令和2年に三沢市で予定されていた北海道・東北ブロック民俗芸能大会への出演が決まっていたが、新型ウイルスの影響で大会は中止に。毎年8月14日に行う「御面遊ばせ」をはじめ、地元での活動も縮小や休止を余儀なくされてきた。
 行動制限が解かれるなどした今年、大会が三沢市で行われることとなった。見送りとなっていた出演の打診を受けて舞台に上がることを決め、板用多目的集会センターで連夜の稽古を重ねている。
 当日披露するのは、栄枯盛衰のはかなさや仏の慈悲を伝える「庭の讃」。11日夜は踊り手と笛や太鼓、世話係の会員ら約20人が集まって稽古を繰り広げた。
 踊り手は20代から50代の男性8人。最年少の会社員・平山大希さん(26)は「こうして集まれることがうれしい。自分の中の課題を克服して、いい剣舞を披露したい」と熱心に打ち込んでいた。
 ベテラン会員らは装束の手入れを丹念に行った。前保存会長の大津勝志さん(79)は「長期間にわたって休むことはいままでなく、後継者育成の面でも心配だった」と話し、3年ぶりとなる本格的な活動の再開を喜び、躍動する踊り手たちの姿に目を細めていた。
 保存会は15日に日頃市を出発してリハーサルに臨み、本番に備える。大津会長(73)は「地域一丸で大会に向けて取り組んでいる。県指定に対する一つの答えを示す機会だとも思う。力むことなく魂を込めながら、われわれの踊りを見せたい」と話している。大会には同保存会を含め、北海道と東北から8団体が出演を予定している。