「後発地震注意情報」発表へ 日本・千島海溝でM7級発生時 本県など7道県対象
令和4年10月15日付 1面
内閣府などは、本県を含む三陸沖、北海道沖の日本海溝・千島海溝沿いの領域7道県でマグニチュード(M)7級以上の地震が発生した場合、その後起きる可能性があるより大きな「後発地震」への注意を発信する「北海道・三陸沖後発地震注意情報」を発表することとし、おおむねの内容を固めた。発表から1週間、後発地震による揺れや津波から迅速に避難できる態勢をとり、命を守るよう呼びかけるもので、12月からの運用を目指す。 (三浦佳恵)
12月からの運用目指す
日本海溝・千島海溝沿いの領域では、巨大地震の切迫性が高まっており、M7級以上の地震発生後、さらに大きな地震が続発する事例が過去に2度確認されている。その一つが、気仙にも甚大な被害をもたらした平成23年の東日本大震災。発生2日前の3月9日に、「先発地震」となるM7・3の地震があった。
内閣府は震災の教訓などを踏まえ、巨大地震が発生した際に一人でも多くの命を救うため、後発地震への注意を促す情報発信が必要として有識者による検討会を設置。検討を進め、北海道・三陸沖後発地震注意情報の運用を決めた。
14日に、内閣府が盛岡市の県庁で行った説明によると、同注意情報は日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の想定震源域と、それに影響を与える範囲(北海道から宮城県の一部にかけての太平洋沿い)で、M7以上の地震が発生した場合に発表。対象エリアは、北海道から千葉県の太平洋に面する7道県のうち、最大クラスの地震によって津波高3㍍以上、震度6弱以上が想定される地域となる。
発表は、先発地震から約2時間後を見込み、内閣府と気象庁が合同で行う。住民には、▽避難経路・避難場所の確認▽すぐに逃げられる服装での就寝▽非常持ち出し品の常時携帯──などの備えを呼びかける。
企業や施設管理者らには、▽避難経路や誘導手順等の確認▽発災時の職員の役割分担確認▽正確な情報伝達──などを求める。呼びかけ内容は、先発地震や津波による被害状況によって変更する。
発表後は定期的に防災対応を周知し、1週間後に内閣府が終了を知らせる。先発地震による震度が大きい、または予想される津波が高い場合には、発表前に気象庁が会見を開き、先発地震の解説と注意喚起を行う。
日本海溝・千島海溝沿いでは、南海トラフ沿いで過去に起きたようなM8級以上の地震後に再び同級以上の地震が続発するケースは確認されていない。
また、大きな後発地震が起きる可能性は世界的な事例を踏まえても100回に1回程度という。このため、同注意情報が発表されても地震、津波が起きない場合もある。
同注意情報の発表頻度は、過去の地震数からおおむね2年に1回程度を想定。情報発信時は、社会経済活動を継続したうえで必要な防災対応をとることとし、国や自治体からの事前避難は呼びかけない。
内閣府の想定によると、日本海溝・千島海溝沿いで巨大な地震、津波が発生し、早期避難を行わなかった場合、7道県で見込まれる最大死者数は、日本海溝が約19万9000人、千島海溝が約10万人。岩手県が先月発表した被害想定によると、気仙両市では最大30~40人余りの死者が予測されている。
政府はこのほど、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震にかかる地震防災対策の推進に関する特別措置法に基づき、防災対策の強化が必要な「地震防災対策推進地域」である大船渡市と陸前高田市を「津波避難対策特別強化地域」に指定。住田町を同推進地域に追加した。
このうち、津波避難対策特別強化地域は、市町村長が作成する津波避難対策緊急事業計画に基づき、避難場所や避難経路の整備など、津波から避難するために必要な緊急実施事業を推進できるもの。
避難場所や避難路などの整備に対し、国庫負担割合が2分の1から3分の2にかさ上げされるほか、計画に基づく集団移転促進事などには特例措置等が受けられる。
同注意情報発生時の防災対応例は別表。