40年間の〝新発見〟に光 市立博物館 「シン・大船渡展」スタート(別写真あり)
令和4年10月16日付 6面

大船渡市立博物館(鈴木満広館長)による特別展「シン・大船渡」が15日、館内で始まった。県内最古となる約5億年前のカンブリア紀の岩石が展示されるなど、同館開館から40年間での〝新発見〟を分野別に紹介。期間は来年1月15日(日)までで、今月23日(日)には展示解説会も予定されている。
この特別展は、市制施行70周年と同館開館40周年を記念して企画。郷土の自然や文化に関する理解を深めるとともに、興味関心を喚起しようと企画した。
昭和27年に、2町5カ村の合併で大船渡市が誕生。30年4月に大船渡町字笹崎の旧大船渡町役場庁舎を転用して「市立科学博物館」が発足し、57年に末崎町の碁石海岸に現施設が完成した。
当時から常設展示のテーマは「大船渡その海と大地」。全国的にも貴重な原寸大の地層レプリカや、学術的に価値が高い化石などの陳列に加え、漁具・漁法紹介などを充実させてきた。
開館後の研究活動でも多くの成果が生まれ、新たな発見や文化的価値の広がりもあった。こうした分野に光を当てようと、特別展示では「広がる魅力」「さかのぼる歴史」とし、生物や民俗、地質、考古の4テーマ別に配置した。
地質分野で関心を集めるのは、県内最古となる岩石で、三陸町越喜来甫嶺地区で見つかった「甫嶺ケイ長質岩」。今から約5億年前の古生代カンブリア紀にあたるもので、5年ほど前に学会で発表され、同館では初めて一般向けに展示した。
開館当時、市内で確認されていたのは約4億年前のシルル紀までだった。この40年で、古生代の多様な地質が残る大船渡の特色に、さらに深みが増したことなどが理解できる。
また、民俗分野展示でまとめられた吉浜のスネカは、平成16年に国の重要無形民俗文化財に指定。30年には全国7県9件の来訪神行事とともに「来訪神 仮面・仮装の神々」としてユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。
このうち、三つの面は実際に使用されているもので、保存会から借りた。海に流れ着いた木の造形を生かし、左右非対称で独特の迫力がある面構えを静かに伝える。
生物分野では、一昨年に博物館敷地内で見つかり、県内では45年ぶりの発見となったワスレナグモを紹介。昨年に県立博物館が碁石海岸での調査で60年ぶりにコガネグモを確認した足跡も掲げた。
このほか、東日本大震災後の越喜来小学校再建に伴う発掘調査で製鉄炉や鍛冶炉が明らかになった鍛冶沢遺跡の展示も。常設展示にはない見どころが多く、初日から関心を集めた。
同館の工藤やよい主任学芸員は「調査活動で分かってきた成果や、新たな価値の広がりを知ってもらえれば」と話し、市内外からの来館に期待を込める。
今月23日と来年1月15日の各午前10時、午後1時30分、同3時には展示解説会を開催。定員は各回20人程度で先着順とする。申し込み、問い合わせは同館(℡29・2161)へ。