視点/陸前高田・三陸花火競技大会交通渋滞トラブル㊤ 駐車場に百数十台入れず 実行委 個別に相談対応し返金へ

▲ 過去最多の約1万2000人が来場した三陸花火競技大会。駐車場に入れない車が百数十台に上り、課題も浮き彫りとなった

 陸前高田市で今月8日に開かれた三陸花火競技大会。有料駐車場を事前予約した来場者の車両百数十台が駐車場に入れないトラブルが発生し、主催する実行委が返金などに応じる事態となった。来場者数約1万2000人(実行委調べ)と過去最多となった今大会は、運営面での大きな問題も浮き彫りにした。地域のにぎわい創出へ期待も集める同大会。原因や課題を見つめ、今後の対策を打ち出すことが求められている。(高橋 信)


 

 「花火を楽しみに来てくれたにもかかわらず観覧できなかったお客さまには、申し訳ない気持ちしかない」。東海新報社の取材に応じた実行委の浅間勝洋委員長(41)が神妙な面持ちで語った。
 実行委への返金請求などに関する連絡は300件を超えたという。電話は三つの回線を使用しているが、問い合わせが集中し、つながりにくい状況が続いている。損失額は現時点で少なくとも500万円に上る見込みで、1件ずつ状況を丁寧にヒアリングしたうえで返金などに応じていくとしている。
 実行委は、有料観覧席を設けた高田松原運動公園に近い未舗装の市有地に駐車場を開設した。2400台程度を収容できる広さだったが、密集しないよう2100台を受け入れることにした。このほかに気仙川沿いと夢アリーナたかたの計3カ所を駐車場として使う計画を立てた。
 しかし、前日まで続いた雨の影響で運動公園そばの駐車場では、ぬかるみにはまり、立ち往生する車が多数見られた。水たまりのない場所に誘導するなどしたため駐車位置が乱れ、余裕を持ってスペースを確保したはずが、想定分を収容できなかった。結果、止めきれない車を他の駐車場に促すという不測の事態に陥った。
 駐車場での交通整理に苦慮しているとの報告を受けた実行委本部は、誘導係のスタッフ数を開場時の14人から倍の28人に段階的に増員。急きょ駐車場をもう1カ所増やしたうえ、別の駐車場を案内したが、1台ごとの説明に時間を要し、案内待ちでできた長い車列のすべてに伝えきることができなかった。

 さらに午後3時ごろから、会場周辺の交通量が増し、運動公園近くの中心市街地から三陸沿岸道路の陸前高田インターチェンジ(IC)周辺で大渋滞が発生。花火の打ち上げが始まった同6時になっても渋滞は解消されず、身動きがとれない状況にしびれを切らしたかのように、クラクションを頻繁に鳴らす車などがあった。
 2年前のプレ大会を含め、過去3回あった大会では、交通流の分散を図るため、会場最寄りの陸前高田ICの乗り降りを避けるよう周知を徹底。しかし、今回はその周知を怠り、その結果、盛岡方面から竹駒町を経由して会場に向かう車と、三陸道の南北から同ICで降りる車が合流し、解消が困難な渋滞につながったとみられる。
 実行委によると、イベントスタッフは共催した市の職員らを含めて500人規模。大会を重ねるごとに人数を増やしているものの、マンパワー不足は否めない。市職員を除く無償のボランティアは少数で、多くがイベント会社などを通じて確保した有償スタッフだが、駐車場でのトラブルを受けて増員したスタッフは案内係としてのノウハウが乏しく、リスク管理の課題が露呈した形となった。
 浅間委員長は「お客さまや関係者にご迷惑をおかけした。われわれの想定が及ばず、準備不足だったと受け止めている」と反省し、「まずは、ご相談をいただいているお客さまにしっかり向き合いたい」と話す。