2022市長選/混沌状態続く〝勝負の秋〟 新人4氏 前哨戦に熱 告示まで残り1カ月 政治姿勢や対立軸見極めへ

 任期満了に伴う大船渡市長選は、11月20日(日)の告示まで残り1カ月となった。立候補を予定しているのは、表明順に、いずれも新人・無所属で、イベント企画業代表の鈴木茂行氏(53)=猪川町=と、元会社役員の村上守弘氏(63)=同町、前市議会議長の渕上清氏(64)=盛町、元市議の佐藤寧氏(55)=立根町=の4氏。現職が勇退を表明し、12年ぶりに新市長が選出されるとあって関心が高まる一方、対立軸や政治姿勢の違いを見極める様子見の雰囲気も。〝勝負の秋〟は混沌とした状態のまま深まりを見せる。写真の並びは右から表明順。(佐藤 壮)


 今市長選は、昭和27年の市制施行から数えると通算20回目。三陸町との合併後は6回目、東日本大震災以降は3回目となる。新人同士の選挙戦は、平成22年の三つどもえ以来12年ぶりとなる。投開票は、11月27日(日)に行われる。
 3期目の現職・戸田公明氏(73)=猪川町=が8月に勇退を表明し、12年ぶりに新市長が誕生する。昭和59年の第10回選挙も四つどもえの構図となったが、新人のみによる4人以上の立候補となれば、市長選史上初となる。
 鈴木氏は「タウンミーティング」と称した対話機会を設けるとともに、動画サイト・ユーチューブでの発信にも注力。昨年、いち早く名乗りを上げたが、後援会組織は個人主体の活動が続く。「当選ラインから遠いのは自覚しているが、何が起きるか分からない。一つの政策が〝バズる〟こともある。市長選自体に関心が高い人も多く、自分の言葉を発信していきたい」と話す。
 村上氏は自らの足で約1万4000世帯を回りきり、今後は10カ所以上ですでに行ってきた車座形式の「語る会」をペースアップさせる。4種類の後援会報では、産業振興や子育て支援、観光などの施策を訴えた。選挙初挑戦で、民間経験を生かす政治姿勢の浸透が鍵に。「私は当初から『市民党』として地道にやっている。政策を分かってもらうための活動を続ける」と語る。
 渕上氏は盛町内での街頭活動に加え、支援者とともに地域を回り、今月から「語る会」を重ねる。市議会議長経験や各種活動での知名度を生かしたいが、各候補予定者と支持基盤が重なる部分もあり、優位性や違いをどう明確化していくかがポイントに。「支援者と一緒に、支持の掘り起こしと課題の洗い出しを進め、今後の方向性を打ち出す。この姿勢を続けたい」と見据える。
 市長選は8年ぶりの挑戦となる佐藤氏は表明した8月中旬以降、地域回りやつじ立ちを継続。組織的な後援会活動や地域回りは他陣営に先行を許していたが、今月に入って活発化してきた。「やるべきことをやる。将来を担う子どもたちの食育や健全育成のためにも、小中学校の給食費無償化は実現させたい。さらに、できるだけ多くの国策事業を持ってくる市政を」と訴える。
 各陣営が積極的に活動する一方、市内では依然として「誰に投票すべきか」「今までとどう変わるのか」といった声が多い。現職・戸田氏や同氏の後援会組織は後継候補を擁立せず、これまで基準の一つとなってきた「継続か、刷新か」の選択軸はない。
 「ポスト復興」「ポストコロナ」を見据え、持続可能なまちづくりを描くメッセージや実行力、信頼性が求められる今選挙。支持獲得に向けた手法も多様化する中、各陣営は知恵を絞りながら前哨戦を繰り広げている。
 各候補予定者だけでなく〝第5の候補〟が出るかにも注目が向き、今月も水面下で擁立模索が続く。前回選で1万1000票を獲得し、現職に約1000票差で敗れた元参議院議員の藤原良信氏(71)=日頃市町=に、出馬の動きはない。
 今月26日(水)には、市役所で市長選立候補予定者向けの説明会が予定されている。これまでに表明した4氏の出席で〝固まる〟かが焦点となる。
 市長選と合わせ、市議会議員(定数20、欠員1)の補欠選挙も行われる。新人で神職の宮﨑和貴氏(48)=末崎町=が出馬意思を固めている。同日は、補選立候補予定者の説明会も行われる。
 9月1日現在、同市の有権者数(18歳以上)は2万9628人(男1万4131人、女1万5497人)。前回選の投票当日有権者3万1536人と比べ、1908人少ない。前回選投票率は73・91%だった。