視点/陸前高田・三陸花火競技大会交通渋滞トラブル㊦ 混乱回避の対策 周知徹底を 反省生かした運営問われる

 陸前高田市で今月8日に開かれた三陸花火競技大会で、事前予約した有料駐車場に来場者の車両百数十台が入れなかったトラブルが発生した。市内には観覧会場や駐車場までの道順を示す立て看板が少なく、土地勘のない観客などから実行委に対して「看板がなかった」という指摘が多く寄せられた。
 実行委の浅間勝洋委員長(41)は「市内に入ってからの案内は特にぜい弱だった。『インターネットのマップで示した経路の通りに行ったら交通規制に引っかかった』という声もいただき、周知不足だった」と認める。
 大会を共催した市は「実行委との連携が足りなかった」としている。戸羽太市長は「運営上の課題として真摯に受け止めねばならない」と前置きしたうえ、「あれだけの大会を開こうと力を合わせる若い世代の熱意やバイタリティーは大事にしていきたい」とも語った。
 両者は4月の三陸花火大会と今回の競技大会について、互いの役割を明確化するための共催協定を締結。主催者の実行委は▽イベントの企画・運営▽花火会社、出演者、スタッフの手配▽警備、交通規制の計画・実施──などを手掛け、市は▽警備、交通規制実施の支援▽会場、駐車場敷地への市有地提供▽市広報などによる情報発信──などを担った。
 市観光交流課の村上知幸課長は「路上での駐車防止対策など、これまでの課題に対する話し合いは綿密に行ってきたが、別の問題が発生し連携が足りなかった。人員体制や配置をどうするか、不測の事態にどこまで対応できるか協議していく。防災対策の周知も検討していく必要がある」と見据える。



 大会は国内最大級の規模を誇り、実行委は春と秋の年2回開催を方針としているが、1回にするなど規模縮小を検討すべきとの声もある。昨年の大会前に、警察や消防、観光事業者などを対象に開いた実行委の説明会では、リスク管理に万全を期すため、参加者から「年1回の開催でいいのでは」と再考を求める意見が上がった。
 実行委によると、年1回に減らせば採算が合わず、大会自体の規模を縮小すれば他の花火大会との差別化が困難になり、集客力低下が懸念されるという。地域や地元企業への負担を極力抑えた「自立・継続的」な大型イベントとしての定着を将来的な目標に掲げており、現時点で方針を変更する考えはないという。
 打ち上げられる花火は、見事の一言に尽きる。今大会は立ちこめる煙に花火が隠れる時間帯もあったが、計1万5000発超が夜空を彩る光景は圧巻だった。プレ大会から打ち上げを担当する山梨県の花火業者㈱マルゴーは今年8月、秋田県での全国花火競技大会で、業界最高峰の栄誉である内閣総理大臣賞を受賞した輝かしい実績を持つ。
 大船渡市立根町の菅野香澄さん(35)は、高田町の商業施設「アバッセたかた」そばで、娘2人を含む家族5人で鑑賞した。
 「子どもたちが毎回楽しみにしている。花火師の思いが詰まった花火がたくさん打ち上げられ、迫力もすごかった」と振り返り、「みんなを笑顔にするイベントだと思う。これからもずっと春と秋に開催してほしい」と望む。
 地元事業者も実行委を応援している。陸前高田市中心部の商業者らでつくる高田まちなか会の磐井正篤会長(65)は「『誰かがやってくれるではなくて、俺たちでこの地域を盛り上げていこうよ』という若い人たちの心意気を応援するのは自然な発想だ」と話す。
 「どんなイベントであっても企画・運営は難しいことで、そのたびに課題は出てくる。反省すべきことをしっかり反省し、次に生かしてほしい」とエールを送る。
 実行委やスタッフの人員・経験不足などを背景に発生した今回のトラブル。駐車場や観覧席チケットの高額な料金を支払ったにもかかわらず、会場にたどり着けなかった人がいた事実を胸に刻みつつ、「次」にどうつなげるかが問われている。次回大会は来春の予定。交通分野をはじめとする各種対策については、これまで以上の徹底と周知が必要だ。三陸の観光の目玉イベントとして定着することを願い、今後の運営を注視したい。