感謝を込めて復興報告 派遣職員210人が再訪 市制70周年事業の一環 今後のつながり強化も誓う(別写真あり)

▲ 県内外から訪れた職員らが再会を喜び合った

 大船渡市による市制施行70周年記念事業「派遣職員復興報告会」は20日、盛町の市民文化会館リアスホールで開かれた。東日本大震災以降、これまで赴任した職員数は自治体を中心に45団体から延べ518人に上る。復興計画は令和2年度で終了した一方、新型コロナウイルスの影響で交流が難しい状況が続き、70周年の節目に合わせて企画。市側は各種業務への尽力に感謝を示し、全国各地から訪れた職員たちは、さらなるつながりの強化を誓った。(佐藤 壮)

 

復興事業の成果などを確認した出席者

 復興支援で派遣された各自治体職員らを一堂に招くのは、今回が初めて。市と派遣元の自治体や派遣職員との絆を再確認し、新型ウイルスの影響で希薄となっている交流の場を創出するとともに、苦労をともにした派遣職員同士が懇親することで、関係団体間のつながり強化も見据えた。
 県内外から約210人が出席。市内物産品の販売や関連映像の紹介が行われた大ホール前のホワイエでは、市職員らと再会を喜び合い、近況を報告しながら笑顔を交わした。
 大ホールでのオープニングアトラクションでは、大船渡東高校太鼓部が演奏を披露。息の合った迫力ある音色で来訪を歓迎し、盛大な拍手を浴びた。
 引き続き、戸田公明市長が「膨大で困難な事業が立ちはだかったが、派遣を受け、心強かった。熱い志と被災された方々に寄り添う優しさ、思いやりを持ち、多岐にわたる業務に尽力された。皆さんの支援がなければ、復興はなし得なかった」と感謝の言葉を述べた。
 震災からの復興報告も市長が行い、被災状況に加え住宅再建、市中心部の整備、被災者支援などを総括。今後の課題として防災集団移転促進事業買取地の活用や、復興事業で整備・構築されたモノ・コトを生かした交流人口の拡大、地域経済の復興を挙げた。
 記念講演で登壇したのは、平成24年4月から4年3カ月間、副市長を務めた角田陽介氏(48)。現在は筑波大学客員教授や、国土交通省都市局街路交通施設課の街路事業調整官を務めている。
 「大船渡市の復興過程での思い」と題し、市が発刊した復興記録誌への寄稿を振り返りながら、各施策を進めるうえで重視していた部分などを解説。大船渡駅周辺整備に関しては「派手さはないけれど玄人好みの進め方で、知見は全国に知らせる必要がある」と述べたほか、点在する空き地を生かした差し込み型の防集事業やBRTの導入など公共交通確保も、将来につながる点として挙げた。
 全国で取り組んでほしいこととして、事前復興計画の策定を紹介。「災害は、今の課題を一気にあぶり出す感がある。被災していない時に議論することが、その先の合意形成につながるのでは」と語ったほか、地籍調査の推進も強調した。
 派遣職員を代表し、平成25~30年に県任期付職員として派遣され、災害復興局で勤務した野口学さん(56)=県大船渡土木センター=が「一日も早い復興に向け、与えられた業務を遂行した。震災を通じたつながりを、さらに強いものにできれば」と述べた。
 懇親会は大船渡プラザホテルで開催。21日は復興現地視察を予定し▽大船渡駅周辺コース▽末崎コース(小河原防集団地、太田団地、泊里漁港など)▽赤崎・綾里コース(森っこ・洞川原防集団地、東朋中、港・岩崎防集団地など)▽越喜来コース(鬼沢漁港、泊防集団地、越喜来小、崎浜防集団地など)──が用意されている。