液体ガラスで〝長寿命化〟 浄福寺の親鸞聖人像 腐食と火災防ぐ作業実施(別写真あり)

▲ ガラスコーティングが施されている親鸞聖人像

 住田町世田米の浄福寺(多田俊宏住職)境内に立つ高さ3㍍20㌢の親鸞聖人像を、液体ガラスでコーティングする作業が27日に始まった。20年以上前に落雷被害を受けたモミの立木を削り出して造られたチェーンソーアートの木像で、風雨による腐食が進み始めていたことからの処置。関係者は「せっかく観光名所にもなった場所。できるだけ長く像の状態を保ち、多くの人に手を合わせてもらいたい」としている。 (鈴木英里)

 

完成から5年経過し

 

 親鸞聖人は、浄福寺宗派である浄土真宗の宗祖。世田米中心部を見晴らす高台にある同寺本堂脇のモミの木(樹齢約360年)を生かした「一木造り」の同立像は、平成29年8月からおよそ2週間かけて制作され、同年9月に完成した。
 使われたモミの木はもともと、高さ約20㍍、胴回りは5㍍を超える大木だった。しかし25年ほど前に落雷があり、上部3分の1の高さまで樹皮がはがれ落ちるなどの被害を受けた。
 シリコン剤注入などで処置を施したものの、その後も枯死は進行。かねて、地域住民から「この名木を別の形で後世に残せないか」と声が挙がっていたことを受けて、同寺のほか、陸前高田市横田町の畠山林業(畠山康男社長)、SUMITAチェーンソーアート杣遊会(佐藤清司会長)が協力し、チェーンソーカーバー(彫刻家)の栗田広行さん=山形県室川町=の手で聖人像としてよみがえった経緯がある。
 完成から5年が経過し、土台(高さ2~3㍍)を中心に腐食が始まっていたことから、今回の作業は畠山社長(67)が㈱ニッコー(東京都八王子市、塩田政利代表取締役)に依頼。木に吹き付けることで腐食や衝撃に強くなり、通気性を保ちながら防炎、防虫効果が得られる液体ガラスを取り扱う同社は、大船渡市の千石船「気仙丸」や、陸前高田市役所新庁舎のガラスコーティングも手がけた。
 作業は30日(日)までの予定で、同社の佐藤陽さん(42)と吉澤稔さん(56)が行っている。初日の27日は好天に恵まれ、雲一つない青空の下、2人は腐ってしまった樹皮をそぎ落とし、補修、脱脂、カビ予防など、塗装前の下処理を丁寧に施した。
 畠山社長は、「せっかくいろんなところから人が見に来るようになった像。腐らせたままにはしておけない」と今回の〝長寿命化〟を決めたという。
 世田米出身で、小さいころから同寺境内を遊び場にしていた畠山社長。「あのモミの木は、このあたりに数軒しか家がなかったころから、住田では知らない人のいないほどの大木だった。自分も何度、あの木の見事さに力をもらったか知れない。親鸞さんとなった今も、宗教や宗派に関係なく、見上げたら思わず拝みたくなるような存在。見に来て手を合わせてほしい」と語り、熱心に作業を見守っていた。