漁村実績発表大会で最優秀賞 越喜来漁協青壮年部 磯焼け対策、ウニ畜養など発信
令和4年11月2日付 7面

大船渡市三陸町の越喜来漁協青壮年部(及川忍部長)がこのほど、盛岡市で開かれた第64回漁村活動実績発表大会で最優秀賞に輝いた。同漁協で継続的に取り組んできた磯焼け対策と藻場の再生、ウニの畜養事業の活動発表が高い評価を受け、県の代表として来年3月に東京都で開かれる全国青年・女性漁業者交流大会(全漁連主催)に出場する。(菅野弘大)
全国で取り組み発表へ
県の発表大会は9月中旬に開かれ、県内8漁協の青壮年部等と女性部が実績を発表。気仙からは、同漁協と陸前高田市の広田湾漁協女性部気仙支部が出場し、取り組みを発信した。
越喜来漁協青壮年部では、部員の里見和哉さん(36)が「みんなでスクラム磯焼け対策~藻場造成とウニの移殖・畜養を通じて~」と題して発表し、最優秀賞を獲得。10月中旬に同漁協で賞状伝達が行われ、県大船渡水産振興センターの阿部孝弘所長が里見さんに賞状と盾を授与した。
同漁協では、令和元年度に越喜来湾におけるアワビの漁獲量減少の原因を調査した結果、キタムラサキウニの増殖でアワビのえさとなる海藻が食べ尽くされる磯焼けが確認されたことから、藻場の再生に向けて研究・実践活動をスタート。活動に先立って行った潜水モニタリングでは、漁場に海藻がほぼないうえ、採捕したウニも実が入っていないものがほとんどだったとし、ウニを浅場から深場に移植。地元ダイバーとも協力して効率よく作業を進めたと発表した。
海藻を増やすため、ウニを除去した漁場にコンブ母藻を設置し、種を供給する取り組みでは、育てたコンブから子嚢斑が形成されたものを刈り取り、タマネギ袋や磯焼け対策用に開発された生分解性バイオマスプラスチック製品などのスポアバックに入れた。母藻を海底に設置する作業は、大学生や一般企業の人などに向けた体験会として実施し、磯焼けの実情や藻場再生の重要性を知ってもらう機会とした。
また、2年度からは、県水産技術センターと連携した新たな餌料対策手法の開発に力を注いでいるほか、本年度からは県の委託事業として、ウニの畜養試験にも着手。ウニは磯焼けの原因だが、実入りの良いものは貴重な収入源であるとし、事業の成果も示しながら「ウニを有効活用して得た収入で磯焼け対策に取り組み、漁場利用の持続的なサイクルを作りたい」と展望を述べた。
里見さんはまとめとして、「藻場再生活動によってコンブなどの大型褐藻類や小型海藻が繁茂している」と一定の成果が得られたとしながら、「ウニの密度をなかなか減らせず、海藻のない場所もまだある」と課題を挙げ、活動継続の必要性を強調。地元の漁業者以外の協力に感謝を述べ、人との関わりを大切にしながらの活動を誓った。
里見さんは今後、県での発表を踏まえて原稿をブラッシュアップし、来年3月の全国大会に挑む。「活動に携わってくださっている人たちの思いも背負って、漁業の現状や活動の成果を広く伝えたい」と意気込んでいる。