「有終の美」に感謝込めて 客船「ぱしふぃっくびいなす」 通算17回目 最後の入港(別写真あり)

▲ 接岸に合わせて歓迎セレモニーを実施

 日本クルーズ客船㈱(本社・大阪府大阪市)が運航する客船「ぱしふぃっくびいなす」(2万6594㌧、松井克哉船長)は4日、大船渡市の大船渡港野々田ふ頭に入港した。同社は、来月出航のクルーズで客船事業を終了する方針を発表しており、大船渡入港は今回が最後。関係者は東日本大震災直後から励ましを受けてきた船体に感謝を込めながら、心温まる歓迎でもてなした。出港は5日午前9時を予定している。(佐藤 壮)

 

出港はきょう午前9時

 

 入港は令和元年9月以来、通算17回目。午前7時ごろに大船渡湾内を進み、野々田ふ頭では地元関係者約60人が大漁唄『御祝い』に合わせて舞などを披露した。
 今回の入港は横浜発着の「秋の東北クルーズ~大船渡・宮城石巻~」の一環で、乗船客は約210人。デッキに出て拍手で歓迎に対する感謝を示したあと、碁石海岸や平泉、三陸鉄道などに向かうバスツアーに参加したほか、岸壁に設けられた物産販売コーナーなどに立ち寄った。
 同社は今月1日、神戸港来月27日発・1月4日着の国内クルーズを最後に、客船事業を終了すると発表。平成10年に「ぱしふぃっくびいなす」を就航以来、24年間にわたり同船を運航してきた。
 大船渡には同年10月を皮切りに入港を重ね、震災直後の平成23年9月にも来訪。がれきにあふれた港町に接岸した白い船体は、多くの住民に希望を与えた。同29年からは、市の「おおふなと特別観光大使」も務める。
 令和元年以降も入港計画が組まれていたが、新型コロナウイルスの影響で中止が相次いだ。これまで乗船経験がある市民らは、久々の入港を歓迎しつつも、運行終了を残念がった。
 震災後に横浜─大船渡間で乗船経験がある大船渡町在住の佐藤英男さん(81)は「内部の豪華さや居心地の良さもそうだが、困ったことがあった時、船員の方々には優しく対応してもらった。やはり、さびしいね」と話した。
 戸田公明市長は「白く美しい船体は、何度も大きな感動とともに震災復興への励ましを届けてくれた。残念ではあるが、これまでの支援に感謝したい」と感謝を込めた。
 接岸し、岸壁に降りてきた松井船長(51)は「船の組み立ての時から、この船に携わってきた。きょう入った時も、大船渡のまちににぎわいが戻ってきたことがひと目で分かった。大船渡では日本で一番心温まる歓迎を受けてきた。この船は今後もどこかで活躍すると思うし、思い出は消えることはない」と語った。
 5日の出港は午前9時で、市関係者は黄色いハンカチを掲げるなどして見送る予定。一般住民は、同8時30分からふ頭内に入ることができる。