防災リュックの実用性検証 東京出身の防災士2人 普門寺で避難所生活体験

▲ 寝食スペースで夕食をとる古島さん㊨と久保さん

 ともに東京都出身で防災士の古島真子さん(32)=神奈川県茅ヶ崎市在住=と久保玲奈さん(29)=陸前高田市高田町在住=は8日から10日まで、陸前高田市の緊急避難場所に指定されている米崎町の普門寺(熊谷光洋住職)で避難所生活体験を行った。災害でライフラインが停止した状況を想定し、防災リュックの実用性を検証しようと行ったもの。備えの大切さを伝えていくため、「まずは自分から」と体験を糧にした。(阿部仁志)

 

 防災リュックは、古島さんと久保さんそれぞれが普段から備えているものを使用。同寺で寮舎の畳部屋を借り、約3平方㍍の区画を1人分の寝食スペースに設定した。
 3日間の食事は、防災リュックに入っている防災食と保存水のみ。スマートフォンなど通信機器は使用時間や充電を制限し、夜間に明かりが必要な場面では手持ちの電灯を使うなどルールを決めた。
 市販の折りたたみ式トイレを持ち込んで使用し、就寝時は布団ではなくタオルケットや防寒用のアルミシートなどを用いて寒さをしのいだ。
 一夜明けた9日、古島さんは「照明の貴重さ、ごみや排水の処理の問題、床が固い場所での寝づらさなど、体験する前には気づけなかったこと、改めて課題だと思ったことがたくさんある」と語った。
 久保さんも「夜は、どちらかが動くたびに鳴るアルミシートの音や寒さ、背中の痛みで何度も目が覚めた。リュックに入っているカイロを取り出したかったが、アルミシート内の熱を逃がすのが嫌で我慢した」と、いくつもの〝想定外〟に直面した。
 「ライトを使おうとしたら、電池を入れるのにドライバーが必要だった」「トイレを使ったら、手をふくものがなくて困った」「食料で賞味期限が数年前のものがあった」──など、「どうして事前に気づけなかったのか」と思うような場面もあったという。
 缶詰のパンやレトルト食品を数回に分けて食べた古島さんは「ぜいたくかもしれないが、毎回冷たくて同じものを食べていると、正直に言って飽きる。リュックにある食料だけでも生きられるとは思うが、できれば温かいものもほしかった」とし、11年前の避難者の気持ちに思いを巡らせた。
 古島さんと久保さんは、東日本大震災後の陸前高田市民との交流から防災について深く考えるようになり、日本防災士機構が認定する防災士となった。現在、古島さんはSNSを活用して若い世代向けに防災情報を発信する活動を行い、久保さんは同市の一般社団法人トナリノのスタッフとして防災・伝承関連事業に携わっている。
 活動内容も拠点も異なる2人だが、平成30年に出会ってから意気投合し、頻繁に情報交換も行う。この中で「防災リュックを勧める自分たちが避難所を経験したことがない」「より深い防災を知り、仲間の輪を広げていきたい」と今回の体験を決行した。
 古島さんは「今まで自分で考えてきた防災は間違いではないが、足りないものもある。多くの人の日常に防災が自然に溶け込むような工夫をこれからも考えていく」と決意を新たにした様子。
 久保さんは「例えば友達や恋人など、周囲の人が災害対策をしていれば『自分もやらなきゃ』と思うはず。私たちの取り組みが、誰かの命を守る行動を後押しするきっかけになればうれしい」と話していた。