思い出の地で新たな挑戦 陸前高田移住で鉄板焼き店 神奈川出身の飯山さん一家 チャレンジショップであす開業 

▲ 吉田さん夫妻(右側)と会話を弾ませる直起さん(左から2人目)と耀さん(左端)

 ともに神奈川県出身の飯山直起さん(33)・耀さん(27)夫妻が14日(月)、陸前高田市高田町の市チャレンジショップ内に、鉄板焼き店「静流」を開業する。同市は直起さんが大学時代に訪れ、市民と交流した思い出の地で、今年6月、3歳と1歳の子ども2人との一家4人で同県厚木市から移り住んだ。もともと鉄板焼き店を経営していたノウハウを生かし、新天地で新たな一歩を踏み出す。(高橋 信)


 オープンを控えた10日昼、飯山さん夫妻が約5坪の小さな店内で食材の仕込みに励む。高田町の歯科医・吉田正紀さん(72)・和子さん(68)夫妻を招待し、昼食を振る舞うためだ。
 慶応大のアカペラサークルに所属していた直起さん。活動の柱だった陸前高田市でのコンサートの際、自宅に泊めてくれるなど世話をしてくれたのが吉田さん夫妻だった。
 歴代のサークルメンバーを毎年受け入れ、OB・OGから「陸前高田の母」と慕われる和子さんは、おしゃれな雰囲気の店内を見渡し、「センスを感じる」と祝福。直起さんは「ようやくお二人を招くことができてうれしい」と喜んだ。
 吉田さん夫妻も約40年前、高田町での歯科医院開業を機に東京からIターンした。正紀さんは「同じ移住組。子育てしながら店をやるのは大変だと思うが、心から応援している」とエールを送った。
 直起さんは厚木市出身、耀さんは相模原市出身。直起さんは平成27年、26歳の若さで、厚木市の繁華街に最大60人収容の鉄板焼き店をオープンした。宴会会場などとして繁盛したが、新型コロナウイルス禍が直撃し、昨年1月に店を閉じた。
 耀さんと家族の将来について時間をかけて話し合う中で、浮上したのが地方への移住。今春、候補地の1カ所目として、ゆかりのある陸前高田市を下見し、市民の温かな人柄、豊かな自然にひかれ、耀さんが「ここで子育てしたい」と即決したという。
 以前は直起さんがオーナーで、耀さんが店の切り盛りを手伝ったが、新店舗では役割を交換した。2人の結婚は「店を持つ」という共通点がきっかけ。耀さんは大手飲料メーカーなどで働きながら、その夢を追いかけていたが、結婚・出産を機に家庭優先の暮らしにシフトし、直起さんを支える側に徹した。
 「今度はやってみたら」。直起さんにそう背中を押され、チャレンジショップへの出店を決意した。
 おいしさを五感に訴える「シズル感」から店名を考案。カウンター5席のみと広くはない店を逆手に取り、「一人一人のお客さまに特別感のあるおもてなしをしたい」と耀さん。鉄板の横に設けた小さないろりも使い、焼き魚や焼き鳥など、鉄板焼きともひと味違う素材の良さを生かした品も提供する。
 直起さんは「『頑張って』と声をかけられることが多く、和子さんをはじめ、大学時代にお世話になった方々への恩返しの意味を込めて頑張りたい」と思いを新たにする。
 耀さんは「オープンのめどがつき、うれしさでいっぱいだけど不安もある。『あしたも頑張ろう』と思ってもらえるようなおもてなしを心がける。いつかは、まちなかに出店したい」と夢を掲げる。
 営業時間は昼が午前11時30分~午後2時、夜が午後5時~同9時。日曜定休。店の電話番号は、22・8207。