2022市長選/一進一退の混戦 正念場の終盤へ 持ち味発揮も決め手欠く 期日前投票出 調査もとに分析 読みにくい〝当選ライン〟

▲ 各地に設置されている選挙ポスター。5候補の写真が並ぶのは初で、大混戦が展開されている

独自活動貫くも苦戦…鈴木氏
草の根展開で広がり…村上氏
支持先行し広く浸透…渕上氏
現職支持層集め追う…鵜浦氏
組織力で上積み懸命…佐藤氏

 

 任期満了に伴う大船渡市長選は、告示から6日目を迎えた。届け出順に、いずれも無所属で新人のイベント企画業代表・鈴木茂行氏(53)=猪川町、元会社役員・村上守弘氏(63)=同、前市議会議長・渕上清氏(64)=盛町、NPO団体代表・鵜浦昌子氏(67)=大船渡町、元市議・佐藤寧氏(55)=立根町=の5人が立候補し、史上まれにみる大混戦を展開。これまでの情勢は、渕上氏が市内全域に浸透して先行し、村上氏と鵜浦氏が日増しに迫り、佐藤氏が懸命に上積みを図る展開で、鈴木氏は苦戦が続く。依然として態度を決めていない有権者や流動要素が多いまま終盤を迎えた。

 

 東海新報社は今選挙で、期日前投票を済ませた有権者を対象に出口調査(21~24日、市役所本庁)を実施。この分析と、告示前からの取材を加味して終盤の情勢を分析した。
 渕上氏は、市内各地区の後援会支部が機能し、市議会議長経験などの知名度を生かして全地域、各世代に広く浸透。女性層からも多くの支持を集める。地元・盛町内での支持が突出し、有権者数が多い大船渡、猪川、末崎各町でも先行している。
 陣営でも課題の一つとしていた現職支持層も取り込み、序盤は優位に展開。半面、日を追うごとに支持割合は伸びを欠く傾向がうかがえ、抜け出しにはさらなる浮動層の取り込みが重要となる。
 村上氏は、同級生や若年層の市民に加え、企業経験の人脈などによる「世話人」のつながりから、草の根的な取り組みで票固めを進める。日増しに支持割合が増加。出身地の日頃市町でリードし、三陸町吉浜でも広がりがある。
 前哨戦後半以降、他陣営の組織的な攻勢の影響を受けてきた。先行した後援会報配布や語る会といった地域回りの足跡を生かした追い上げが注目される。
 鵜浦氏も、支持を拡大させている。市議会の議長経験者や会派の新政同友会(5人)、連合気仙などの全面支援に加え、現職・戸田公明市長も支持。現市政の継承や初の女性候補、国際経験といった面で期待を集める。赤崎町や三陸町越喜来で広がりを見せる。
 ただ、出馬表明が10月下旬と最も遅く、出遅れ感は払しょくできていない。組織力を生かした底上げの加速が鍵となりそうだ。
 佐藤氏は、自民党県連や同大船渡支部の推薦を受ける。8年前の市長選で敗れはしたが9400票を獲得するなど、一定の知名度がある。給食費無料化や農林水産業の振興といった公約面の浸透でも取り組みが見られ、地元の立根町や三陸町綾里で伸びている。
 一方、同党支持層は、他候補に分散を許している状況があり、さらなる結集が急務。組織力を生かした上積みが求められる。
 鈴木氏の支持は、50代以下が中心。自ら選挙カーを運転して支持を呼びかけ、告示後もSNSを積極的に活用。独自の活動が続く一方、まとまった集票の動きはなく、苦戦を強いられている。
 4年前の前回選は、現職の戸田氏が1万2074票を得て3選を飾ったが、元参議院議員の藤原良信氏も1万1052票を獲得し、激戦となった。
 出口調査では、4年前の戸田、藤原氏投票者とも渕上氏の支持が最多。戸田氏分は鵜浦、村上、佐藤、鈴木各氏と続き、藤原氏分は村上、佐藤、鵜浦、鈴木各氏の順となっている。
 今市長選では告示前、表だって候補を支援する市議は、19人中9人にとどまった。大規模で組織的な動員も少なく、大混戦に拍車をかけている。
 各陣営とも、後援会や支援団体がそれぞれの持ち味を発揮し、支持固めには手応えを得ている半面、浮動層への浸透には決め手を欠く。選挙戦終盤では、投票先を決めかねている有権者にどう訴えを響かせるかが、勝敗を分けるポイントとなりそうだ。
 過去最多の5人出馬で、当選者の得票率は低下が予想されるが、どこまで下がるかは見極めが難しい。四つどもえ構図となった昭和59年の第10回では、全候補に占める当選者の獲得票は9742票で、割合は39・5%だった。昭和61年の第11回以降は一騎打ちが多く、三つどもえとなった平成22年の第17回を含めて当選者はいずれも1万票超を得てきたが、今回はハードルが高く4けた台の可能性が高い。