三春のサクラ元気に育って 滝桜の「子孫」植え替え 苗木の枯死受け シンボルロードに再植樹

▲ 福島県の「三春滝桜」などにゆかりある苗木が、シンボルロードで根づくようにと願った厚海さん㊧と妻の知子さん

 令和3年3月に、陸前高田市高田町のシンボルロード(市道曲松中和野線)沿いに植えられた「三春滝桜」の子孫木が枯死したことを受け、福島県田村郡三春町在住の厚海幸雄さん(73)らがこのほど、サクラの植え替えを行った。関係者らは「今度こそ元気に育って」と2本の苗木に願いを込めた。(鈴木英里)

 

 三春滝桜は樹齢1000年を超す国の天然記念物。厚海さんは滝桜をはじめ、三春町のシダレザクラの実生から苗を育てて東日本大震災の被災地に届ける活動を継続しており、陸前高田市では平成28年、三春町の福聚寺(玄侑宗久住職)と縁がある小友町の華蔵寺(畑山祥山住職)にも60本が寄贈された。
 震災から10年を迎えた昨年は、高田松原津波復興祈念公園近くの中心市街地に整備された高田町の川原川公園に11本を植樹。このうち、3㍍以上ある10年生の1本はシンボルロード沿いに植えられた。
 しかし昨夏、酷暑と水不足などの影響を受けてこの1本の枯死を確認。畑山住職らの「ここで花を咲かせてあげたい」という希望を受け、厚海さんが妻の知子さん(74)とともに同市をふたたび訪れ、大船渡市の阿部造園、同寺の檀信徒らがともに植え替え作業を行った。
 枯れてしまったサクラのすぐそばに新しく植えられたのは、厚海さんの自宅に自生した滝桜の子孫と、四季咲きのシダレザクラの計2本。四季咲きのほうはすでに八重の花びらをした、かわいい花が50輪あまり咲いている。
 厚海さんは「前のサクラは、たくさん花をつけてくれるようにと欲張ってせん定をあまりしなかったため、木に負担をかけてしまった。今回は丈夫な苗木を選んできたので大丈夫だろう」と語り、念のために予備の苗木1本を同寺に預けたという。
 そのうえで、「通常、サクラは2週間で咲いて散るが、うちで育った子孫木は20日間も咲いてくれる。シキザクラのほうは9月から1月まで開花し、さらにどういうわけか3月、4月にも花をつける。この〝夫婦桜〟がそろっていればそれだけ花期が延び、ここを通りがかった人が長い期間、花を見つけては『あれは娘かな』『うちのおじいちゃんかも』と亡き人を思い出してくれるのでは」と話し、2本のサクラの根が無事に活着することを願った。