避難所のあり方考える 震災津波伝承館 企画展示がスタート

▲ 「岩手県の避難所」をテーマにした企画展示がスタート

 陸前高田市の東日本大震災津波伝承館による企画展示「岩手県の避難所─東日本大震災津波から見えてきたこと─」は10日、同館ゾーン4(道の駅側・地域情報スペース)で始まった。今回は、同館の「ゾーン3・教訓を学ぶ」に焦点を当て、平成23年3月11日の震災発生後に開設された県内避難所の状況を振り返るとともに、当時や11年9カ月の社会変化などを受けて浮かび上がった課題と改善点を解説しており、来館を呼びかけている。展示は1月9日(月・祝)まで。
 震災当時の避難所の状況によると、県沿岸部はリアス式海岸で平地が少なく、津波による浸水が広範囲に発生。住居などの建物被害が多く、避難者は想定以上に上った。
 県のまとめでは、県内全域の避難者はピーク時で5万4429人。開設された避難所は399カ所に上った。すべての避難所が閉鎖されたのは、半年余り後の10月7日だった。
 こうした当時の状況を踏まえ、展示では「次の災害に備えての避難所のあり方」を紹介。「発災前の備え」をはじめ、発災後の「初動期(災害発生~24時間)」から「展開期(24時間~3週間)」「安定期(3週間以降)」「撤収期(ライフライン回復時)」に至る中での課題を挙げ、それが県の「市町村避難所運営マニュアル作成モデル」(26年公表)にどう反映されたかをまとめた。
 発災前の備えでは、震災後の災害対策基本法改正による指定緊急避難場所、指定避難所、福祉避難所の指定制度などを提示。日頃からの避難所等の確認、家庭での物資備蓄など、個人の備えにも言及している。
 避難所開設後は、初動期から展開期における「避難者受け入れの開始」、安定期から撤収期の「避難所生活を維持するために」に分け、課題と改善点を解説。
 このうち、避難生活の維持では、行政職員の被災、心身のケアなどに加え、多様性への配慮、感染症対策といった近年注目される問題も課題に。多様性の配慮に対しては、「避難所運営本部に女性など多様なメンバーを入れること」「授乳室や更衣室、相談室などプライバシーに配慮した空間の確保」などを改善点に挙げている。
 課題や改善点からは、実際に避難所を開設、運営する際に参考となる点も多く示されている。
 会場内の「復興を考えるテーブル」では、避難所生活を追体験できる大船渡市赤崎町の同市防災学習館を紹介。展示内容を交え、避難所の運営体制、地域や個人それぞれの災害への備えの必要性などを解説している。
 震災津波伝承館では「避難所の開設についても、日頃から訓練をして新たな課題を見つけ、改善を行って備えていくことが必要。展示を通じ、改めて理解を深めてもらいたい」と話している。
 展示時間は、午前9時~午後5時。
 期間中の今月24(土)、25(日)、1月7(土)、8(日)の各日には、国営追悼・祈念施設管理棟セミナールームで関連イベント「避難所グッズたいけん!」を開催。段ボール製のトイレやベッド、非常用テントの組み立て、防災リュックの準備などが体験できる。
 時間はいずれの日も、午前11時からと午後2時から。定員は各回10人。希望者は事前に電話で申し込みを。
 企画展示の見学、関連事業への参加は無料。申し込み、問い合わせは同館(℡47・4455)へ。