小枝柿・ユズ・ヨモギ 地元資源で「おふろ酢」商品化 合資会社の岩手食菌・夢味耕房 五葉温泉の源泉水も活用 独自の速醸器生かし
令和4年12月21日付 7面

大船渡市赤崎町の合資会社「岩手食菌・夢味耕房」(熊谷照男代表社員)は、独自の柿酢醸造技術を生かし、地元資源にこだわった入浴剤「おふろ酢」を商品化した。市内産小枝柿の「種酢」から、ユズやヨモギの酢をつくり、さらに五葉温泉のアルカリ源泉水も取り入れた。やわらかな肌触りが特徴で好評の声が寄せられ、同社は柿酢技術を生かした地域活性化を見据える。(佐藤 壮)
熊谷代表社員(82)は昭和38年に「岩手食菌研究所」「夢味耕房」を創立。宮城県気仙沼市に作業所を構え、東日本大震災で被災したが、残った看板や測定機材を生かし、自身が得意とする発酵分野の製品づくりを進めてきた。
市内では古くから小枝柿が栽培されてきたが、近年は収穫もままならない木が目立つようになった。一方で、栄養価が高く、豊富に含まれている抗酸化性ポリフェノール(タンニン)の機能性などが注目されている。
同社では、酢酸菌が通気を好む特徴に着目し、微小の気泡を出す「マイクロバブル速醸器」を独自に開発し、短期間で柿酢を製造する技術を確立。一般的な製法では30~50日程度を要するが、1週間で出来上がる。さらに、種酢とすることで同じく抗酸化性があるヨモギの醸造酢を確保した。
また、収穫後に日持ちしにくい陸前高田産のユズも活用。酵素分解処理を行った後、マイクロバブル速醸器で培養することで、まろやかな味わいの「ゆず酢」も生み出した。

好評を博している「おふろ酢」㊨をはじめ柿酢を生かした製品を開発
小枝柿酢、ユズ酢、ヨモギ酢と3種類の醸造酢が完成したが、食酢市場への参入ではななく、入浴剤として加工。日頃市町・五葉温泉のアルカリ源泉水で混合処理することで、全国的にも珍しい「おふろ酢」が完成した。
1000㍉㍑入りを2500円で販売。風呂水200㍑に対して約40㍉㍑を入れてかき混ぜるだけ。利用した地域住民からは「やわらかい肌触り」「かゆみの悩みが解消された」「体臭防止にもなっている」といった声が寄せられているという。現在は五葉温泉や同社で取り扱い、地元入浴施設での活用にも期待を込める。
気仙の風土を生かし、小枝柿やユズ、ヨモギを増やすことや、マイクロバブル速醸器を活用した中高年世代による雇用・収入の場拡大も見据える。熊谷代表社員は「遊休農地の解消や、収入確保の一つになれば」と力を込める。
おふろ酢に関する問い合わせは、同社(℡・ファクス共通22・8240)へ。