「農家としての誇りに」 新嘗祭に銀河のしずく献穀 世田米の阿部さん 農業振興への思い新たに

▲ 神田町長に献穀を報告する阿部さん㊧

 住田町町議で農家の阿部祐一さん(69)=世田米=が、このほど皇居で行われた新嘗祭に、自身が育てた米(銀河のしずく)1升を献穀した。新嘗祭への献穀は、気仙では19年ぶり、同町としては33年ぶり。阿部さんは今回の献穀を励みに、農業振興への思いを新たにしている。(清水辰彦)

 

 新嘗祭は、宮中祭祀の主要祭儀として毎年11月23日に行われている。その年の収穫に感謝して国家の安寧と翌年の豊穣を祈るもので、天皇陛下が神様に新穀をお供えされ、神様と一緒に召し上がる。宮中恒例祭典の中で最も重要な行事に位置づけられている。
 この新嘗祭に使用される米やアワは、毎年10月下旬ごろに各都道府県から献穀、献納されており、本県では毎年、広域振興局単位で各市町村に推薦者を依頼している。気仙では平成15年以来19年ぶり、住田町は平成元年以来33年ぶりの献穀となった。
 献穀者の阿部さんは、町認定農業者連絡協議会会長や農業農村指導士を務めた経験もあり、現在ではJAおおふなと銀河のしずく栽培研究会副会長を担っている。たばこと水稲の複合経営を行っており、田んぼは140㌃、畑は50㌃。銀河のしずくの栽培には県内で作付けが開始された28年度から取り組んでおり、今年は66㌃で栽培した。
 銀河のしずくは、平成27年に県奨励品種として採用されたブランド米。味や香り、粘りなどのバランスのとれた食味や、白く美しい炊き上がりなどが特長。27年度には、試験段階の収穫米が一般財団法人・日本穀物検定協会の食味ランキングで最高位の特A評価を獲得している。
 新嘗祭は、平成30年までは献穀者が皇居へと持参して天皇陛下に拝謁していたが、令和元年は大嘗祭のために中止となり、2年からは新型コロナウイルスの影響で輸送による献納となっている。
 今回の献穀の報告会は21日、住田町役場で開かれ、献穀された旨を伝える宮内庁の加地正人掌典長からの「伝達書」と記念の杯が、神田謙一町長から阿部さんに手渡された。
 今年の米は天候面で不安な面があったものの「いいものができた」と阿部さん。「農家をやってきて50年、自分が献穀できたということは、一つの誇りになる。続けてきてよかった」と喜びを口にした。