完全試合の先へ——佐々木朗希投手 プロ3年目振り返り、令和5年シーズンへ
令和5年1月1日付 2面

「磨きをかけ準備を」
プロ野球・千葉ロッテの佐々木朗希投手は昨年11月12日、大船渡市大船渡町の大船渡プラザホテルでの記者会見に臨み、プロ3年目の振り返りや、令和5年シーズンへの抱負などを語った。
すごく成長できたと思うけど、ここで満足したくない
〈令和4年シーズンを振り返って〉
──高卒3年目の成績をどう捉えるか。
佐々木 シーズン開幕前に自分の中で立てた目標に対し、登板数やイニング、防御率などがいいラインまでいき、けがなく1年を終えることができたのは良かった。その半面、春先にいいスタートを切っただけに、「目標より上を目指せるのでは」と思った中、夏場に間隔が空いてしまったこともあり、悔しさが残る。
──先発ローテーションを守り切るという面で思うことは。
佐々木 シーズン終盤に疲労がたまって間隔が空いてしまうのは想像できていた。そこも踏まえ、夏場のマメでの離脱に関しては自分にとっても想定外で、本当にもったいなかった。
──防御率、奪三振数、勝ち星、イニングなどで、自分の中で一番満足できる数字は。
佐々木 奪三振は、イニング的に見ても十分とれたと思う。(令和5年シーズンで)イニングが増え、試合数が増えたら必然的に上がってくるような数字にはなってほしい。
試合数は20試合、イニングは(令和3年の)2倍近くというところで意識はした。最低限できたなという気持ちではある。
──9勝という数字は予想以上の数字だったか、それとも悔しいと思ったか。
佐々木 シーズン開幕前は、そこまで勝ち星にこだわらないようにしていた。一般的には切りのいい「2桁」という数字があると思うが、もちろんそこにいったら見栄えはいい。勝ち星は先発ピッチャーに求められることでもある。
(令和3年は)3勝だったので、すごく成長できたなとは思うが、ここで満足したくない気持ちもあるので、「そこそこ良かったけど、悔しかったな」という感じ。
──4月に達成した完全試合は、佐々木投手のこれまでの野球人生にとってどんな意味があるか。
佐々木 完全試合という成績は、消えたりするものではないのですごくうれしいが、それ以上に、プロの選手としてまた別の目標もある。先発ピッチャーとして、この1試合だけで終わらず、印象に残るような試合を自分のプレーでつくっていけるような選手になりたい。
──完全試合達成のあとの試合は、マークが厳しくなった中どんなことを思い投げたか。
佐々木 先発ピッチャーに求められるのは、1年間投げ抜く中で安定した成績を残し、チームに勝つチャンスを与え続けること。完全試合が終わったあと、それ以上のことをファンの方々が求めてきていることは感じた。試合の勝ち負け以上にプレーで魅了するのもプロ野球選手の役目だということを分かりつつ、チームを勝たせることが一番だと思うので、そっちを優先して投げるようにした。
──同世代の選手と戦って刺激になったことは。
佐々木 みんなすごいボールを投げたりとか、いろいろな持ち味があり、たくさん勉強になって、自分の中で収穫になることは多かった。そういった選手と話をする機会もなかなかなかったので、コミュニケーションをとったりというところはすごく良かった。
──数字以外で一番自分が手応えを感じた点は。
佐々木 1年間ある程度、一軍のマウンドで戦い続けることができたのは良かったと思う。成長を感じたし、「次に向けて頑張らなきゃ」という思いになった。
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千葉ロッテと正式契約を結んだ際の記者会見(令和元年11月)から約3年。高校時代より大人びた顔つきに
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自分の野球人生に影響を与えた大会
〈WBCに関して〉
──日本代表で戦うことをどう感じているか。
佐々木 (WBCは)僕が小学生のとき(平成21年)に日本代表が優勝し、自分の野球人生に影響を与えた大会。まずは(メンバーに)選ばれなくてはいけないので、しっかり準備をして、もし選ばれたらチームのために頑張りたい。
WBCは出たい人が全員出られるわけではないので、出られたらすごくうれしい。プレッシャーや責任もすごく伴うと思う。(昨年11月の強化試合では)納得のいくボールも少なかった中で、どういうことをやっていかなければいけないかというところが見えたので、オフではそこをまずつぶしていけるようにしたい。
──WBC公式球とNPB(日本プロ野球)公式球とで違いがあり、修正が難しいという話があるが実際はどうか。
佐々木 正直、そこまですごくすべるということは感じないが、NPBのボールと多少なりとも違いはある。(強化試合では)そこを考えながら投げてしまい、細かいコントロールを乱すだとか、腕が振り切れないとか、指をかけられないとか、そういったところがあった。
──同じ岩手出身で、メジャーリーグで活躍するエンゼルスの大谷翔平選手と同じチームでプレーができるかもしれないということへ思うことは。
佐々木 まだ会ったこともなく、すごく雲の上の存在で、野球人としてはみんなが憧れるスーパースター。そういった人とチームメートとなれるように、まずは僕が選ばれるように頑張りたい。
〈プロ生活について〉
──プロ野球選手の生活は楽しいか。
佐々木 試合に勝ったあとなどはすごくうれしいし、興奮する。やりがいも感じるが、シーズン中楽しいのはその一瞬であって、(試合に向けて)常に準備することや試合前の緊張など、苦しい時間もある。
──チームとしてやっていくことの楽しさもあると思う。先輩から助言を受けたり、チームの中で「これが大きかった」と思えるエピソードはあるか。
佐々木 疲れが出てきた夏場、多く失点してしまう試合が続きなかなか調子が上がらない中で、ローテーションの中の先輩ピッチャーにどういう風な波があるとか、これからどういう風な状態になっていくとか、そういったところを教えてもらった。その中で割り切って投げることができ、結果も良くなって調子を取り戻すことができ、本当に感謝している
──プロ野球と高校野球の違いをどう感じているか。
佐々木 休みは少なく、ずっと野球をしている。野球の成績が私生活に影響するので、そういうところで切り替えがすごく難しい。毎週試合があってなかなか疲れがあると休めず、その中で結果を求められるので気持ち的につらい部分はある。
──高校での経験がプロで生きているというところはあるか。
佐々木 高校生のときは自分で考えて練習することが多かったので、ある程度調整の仕方とかも「こうしたらいい」というのを経験できていた。プロに入り、いろいろなことを教わったが、高校時代のルーティン、サイクルが一番合っていることを再認識し、そのリズムを見つけることができたのはすごく生きているなと思っている。

昨年6月、千葉のZOZOマリンスタジアムで行われた協賛試合「黄金の國いわて・大船渡ナイター」のセレモニーに登場した佐々木投手
一つずつ目標かなえて
〈ふるさと岩手、気仙に関して〉
──今年春、盛岡市の県営野球場が閉鎖となる。思い出や閉鎖に対する思いは。
佐々木 高校生のときに投げた球場なので寂しいが、新しい球場はより良い環境になると思うので、これからの高校生や小中学校の子どもたちが投げていくと思うとうらやましいという気持ちもある。(高校時代、令和元年7月に)160㌔が出た試合は満員ですごく印象に残っているし、大事な試合だったので今でも鮮明に覚えている。
──春に完成する盛岡の球場「いわて盛岡ボールパーク」で佐々木投手が投げる可能性もあると思う。もし投げるとすれば、地元の人たちにどんな姿を見てもらいたいか。
佐々木 まずは、高校生のときよりも成長している姿を見せる。勝ち負けもあるが、元気にプレーしている姿を届けることができたらいいなと思う。
──気仙地域の人たちからの応援に対し感じていることは。
佐々木 ZOZOマリンでの試合(協賛試合「黄金の國いわて・大船渡ナイター」「かもめの玉子ナイター」など)で気仙の人が来ていることを知っていたし、いろんな形で(応援に関する)情報を聞いたときはすごくうれしかった。一番は、その期待に応えたいという思い。
──佐々木投手がプロになったあとの3年間も復興に向けて進んできた気仙地方が、これからどんなまちになってほしいか。
佐々木 毎年戻ってくる場所があるというのは、僕の中ですごくうれしいし貴重。そのまちがいつまでも活気であふれるような、そんなまちであってほしいなと思っている。
──プロ野球や佐々木投手に憧れる気仙の球児に向けてメッセージを。
佐々木 今は、僕たちのときと違って、グラウンドに仮設住宅がなかったり、(野球ができる)環境も徐々に良くなっていると思う。その環境を精いっぱい活用して、一生懸命練習に励んでほしい。
野球に限らず、何事も頭を使い、自分で考えてやっていかなければならない。まず自分の力で考え、その中でいろいろな人に頼りながら、支えてもらいながら、一つずつ目標をかなえていってほしい。
〈今年の抱負〉
──個人としての具体的な目標は。
佐々木 数字で言えば、規定投球回とか、25試合投げたいなど。すべてにおいて(昨年よりも)いい数字を残せるようにしたい。
──長いイニングを投げるために考えていることは。
佐々木 (自分は)打たせてとるようなタイプでもない。三振もどれだけとれるかは全然わからない。対策もされてくる中で、バッターをどんな形でも抑えられるように、まずは今もっている球種に磨きをかけて準備をするのが先。シーズンを戦っていく中で、「こういう対策をされたから自分はどうアプローチしたらいい」とかが出てくる。まずは自分の持っているボールをもっとより良いものにすることを大事にしていきたい。
──東北へのメッセージとともに抱負を。
佐々木 (令和4年は)自分の中で最低限の数字を残せたと思っている。この数字を必ず超えなければいけないと思っているし、チームも引っ張っていけるようなピッチャーになりたい。
たくさんの声援をいただき、仙台で投げるときは岩手からたくさんの人が足を運んでくれていることも知っていて、とても力になった。次のシーズンも頑張りたい。

完全試合のその先へ──今年の活躍に期待がかかる
※佐々木朗希投手:平成13年11月3日、陸前高田市生まれ。大船渡高校からドラフト1位で令和2年に千葉ロッテ入団。1年目は実戦登板なし。2年目の3年は、11試合3勝2敗、防御率2・27の成績で、5月27日の阪神戦でプロ初勝利を挙げた。190㌢/85㌔
◆令和4年登板振り返り
⚾3月27日
シーズン初登板で、プロ入り後初の開幕ローテーション入り。楽天戦で6回10奪三振、被安打4、3失点。自己最速164㌔をマーク。勝ち負けつかず。
⚾4月3日
西武戦で8回13奪三振、被安打3、1失点。シーズン初白星。
⚾4月10日
オリックス戦でプロ野球史上最年少、16人目の完全試合達成。完全試合は平成6年以来28年ぶりで、21世紀初。日本記録更新の13者連続奪三振、記録タイの1試合19奪三振もマーク。1軍登板14試合目での大快挙。2勝目。
⚾4月17日
日本ハム戦で8回14奪三振の完全投球。前回登板から17イニング連続無安打で日本記録を更新。日本人最長タイの25回連続奪三振も達成。シーズン初登板から4試合以上連続の2桁奪三振はプロ野球史上3人目。勝ち負けつかず。
⚾4月24日
オリックス戦で5回4奪三振、被安打6、2失点。3勝目。
⚾5月6日
ソフトバンク戦で6回11奪三振、被安打6、1失点。勝ち負けつかず。
⚾5月13日
オリックス戦で7回7奪三振、被安打6、1失点。4勝目。
⚾5月20日
ソフトバンク戦で6回9奪三振、被安打4、1失点。5勝目。
⚾5月27日
阪神との交流戦で6回7奪三振、被安打4、無失点。勝ち負けつかず。
⚾6月3日
巨人との交流戦で5回6奪三振、被安打8、自己ワーストの5失点。シーズン初黒星。
⚾6月11日
DeNAとの交流戦で8回5奪三振、被安打3、1失点。カーブやスライダーを絡めた投球が増え注目集める。勝ち負けつかず。
⚾6月22日
西武戦で7回9奪三振、被安打3、無失点。6勝目。
⚾7月1日
楽天戦で4回10奪三振、被安打2、無失点。プロ野球史上初の初回4者連続奪三振を記録。右手指先のマメがつぶれるアクシデントに見舞われ緊急降板。勝ち負けつかず。
⚾7月27日
プロ野球マイナビオールスターゲーム2022第2戦の全パで先発。1回を投げ被安打3、1失点。オールスターで日本人選手最速タイの162㌔をマーク。
⚾8月3日
楽天戦で6回途中5奪三振、被安打8、5失点。2敗目。
⚾8月10日
ソフトバンク戦で6回10奪三振、被安打5、3失点。3敗目。
⚾8月19日
楽天戦で6回6奪三振、被安打5、5失点。苦しみながらも7勝目。
⚾8月26日
楽天戦で7回8奪三振、被安打3、無失点。8勝目。
⚾9月2日
オリックス戦で9回完投、9奪三振、被安打4、1失点。好投するも援護がなく4敗目。
⚾9月14日
日本ハム戦で5回、6奪三振、被安打4、1失点。9勝目。
⚾9月26日
シーズン最後の公式戦登板。ソフトバンク戦で6回5奪三振、被安打2、1失点で勝ち負けつかず。
⚾11月10日
野球日本代表「侍ジャパン」トップチームのメンバーとして、オーストラリア代表との強化試合に先発。4回2奪三振、被安打4、無失点の好投で〝侍デビュー〟を飾った。
◆試合以外での特筆事項
⚾5月13日
佐々木投手が3、4月度パ・リーグ投手部門の「大樹生命月間MVP賞」を初受賞(NPB発表)。
⚾6月7日
千葉ロッテの本拠地・ZOZOマリンスタジアムで、岩手県政150周年と大船渡市制施行70周年を記念した協賛試合「黄金の國いわて・大船渡ナイター」が行われ、佐々木投手もグラウンドに姿を見せてふるさとのファンを喜ばせた。
⚾7月6日
マイナビオールスター2022パ・リーグ先発投手部門のファン投票(最終結果)で30万4034票を集め1位(NPB発表)。
⚾7月7日
ZOZOマリンスタジアムで大船渡市のさいとう製菓㈱による協賛試合「かもめの玉子ナイター」が行われた。
⚾11月10日
佐々木投手と松川虎生捕手のバッテリーが4月に達成した完全試合が、「プロ野球における完全試合を達成したピッチャーとキャッチャーの最年少(合計年齢)」(佐々木投手が20歳5カ月、松川捕手が18歳5カ月)として、ギネス世界記録に認定されたと発表(千葉ロッテ)。この試合での13者連続奪三振も「プロ野球におけるピッチャーの連続奪三振最多数」として合わせて認定された。