ロダン代表作「考える人」像 友好都市・名古屋から貸し出し 市立博物館で展示検討 今秋から3年間を計画

▲ 陸前高田市立博物館への貸し出しが検討されている名古屋市博物館の銅像「考える人」(同館提供)

 「近代彫刻の父」と称される19世紀フランスの彫刻家オーギュスト・ロダンの代表作「考える人」が今秋から約3年間、陸前高田市立博物館で展示される可能性が浮上してきた。東日本大震災を機に友好館として協定を結んだ名古屋市博物館で展示されており、大規模改修のため同館が休館する間、貸し出される方向で検討中。震災で全壊し、昨年11月に復活を果たした陸前高田市の学びの拠点に、世界的に有名なブロンズ像が置かれれば、県内外から注目を集めそうだ。

 名古屋市博物館によると、今月中にも陸前高田市立博物館で運搬業者による調査があり、安全に搬入できるか確かめられれば貸し出しが決まる。10月以降に運び入れ、令和8年度ごろまで貸し出す見通し。輸送費は名古屋市が負担する。
 同市博物館の「考える人」はロダンが作った原型から公式につくられた世界に20体以上ある鋳銅像の一つで、本体の高さ約1・8㍍、重さ約900㌔。昭和52年の同館開館に合わせ、名古屋市民が自費で購入し、同市に寄贈したものという。
 同館の改修に伴い、収蔵資料の仮置き場を検討する中で、「友好都市である陸前高田の方々に見てもらおう」と、貸し出し案が浮上した。
 名古屋市は震災後、陸前高田市の行政全般を「丸ごと支援」する独自の取り組みを展開し、これまでに延べ250人超の職員を派遣。24年に両市教委が絆協定を、26年に両市が友好都市協定を結び、29年には両博物館が友好館としての協定を締結した。
 市立博物館は高田町の中心市街地に位置し、同じく震災の津波で全壊した「海と貝のミュージアム」と一体的に整備。昨年11月5日にオープンした。
 館内では文化財レスキューにより回収・修復された被災資料をメインに、約7300点を展示。開館から1カ月余りの先月中旬には、入館者数が累計1万人を突破した。
 市教委の山田市雄教育長は「国内に4体しかない大変貴重な美術品で、正式決定の段階ではないが、大変光栄なこと。展示が実現すればさらに多くの人に博物館を楽しんでもらえるだろう。名古屋とのつながりがきっかけで、改めてこの絆に感謝している」と感激している。
 名古屋市博物館の根木剛総務課長は「陸前高田市とは行政同士の交流などが盛んだが、貸し出しによって博物館同士の文化的交流という新たな形を提案できると思う。ぜひ陸前高田の大勢の人に見ていただき、名古屋を身近に感じてもらいたい」と期待を込める。(高橋 信)