課題解消の取り組み評価 気仙の2団体が入賞 県の「いわてDX大賞」で
令和5年1月11日付 1面


県民賞のトナリノ
県による「いわてデジタルトランスフォーメーション大賞(以下、DX大賞)」の受賞団体がこのほど決まり、気仙からは大船渡市赤崎町の㈱菊池技研コンサルタント(菊池透代表取締役)が優秀賞に、陸前高田市高田町の一般社団法人・トナリノ(佐々木信秋代表理事)が県民賞に輝いた。社内や地域の課題解消に向け、デジタル技術を生かした取り組みが高く評価されたもので、いずれも受賞を喜び、さらなるDXの推進を誓っている。
DXは、データやデジタル技術を活用し、製品、サービス、ビジネスモデルだけではなく、組織、企業文化・風土を変革することを指す。県はこの推進に力を入れており、DX大賞は令和4年度に創設された。
同年10月、県内の企業や各種団体からDXにつながる取り組み事例を募集。10団体が応募し、選考委員の審査によって最高賞の大賞1団体、優秀賞2団体、県民賞1団体を決定し、先月下旬に表彰を行った。
優秀賞に選ばれた菊池技研コンサルタントの取り組みは、「RPA等を活用した定型業務の効率化・自動化の実現」。社内で働き方改革を進める中、若手社員7人でプロジェクトチームを立ち上げ、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション、人の代わりにデジタルロボットがパソコン上の動作を代行する技術)を活用した作業効率向上とペーパーレス化に取り組んだ。
同社の総務、営業各課が課題とする定型業務のうち、▽入札公告のダウンロードと整理の自動化▽タイムカード電子化による原価情報と勤怠情報の整合性チェック自動化▽消耗品在庫確認の自動化──に挑戦。市販のソフトウエアや外部委託に頼らず、独自で作ったアプリを活用するなどし、コストを抑えながらも作業時間の約8割削減、ペーパーレス化を図った。こうした〝手作り感〟ある取り組みが、「他企業にも展開が期待される」と評価された。
チームリーダーの情報課主任・菊池大志さん(35)は「手作り感ある取り組みが、かえってプラスになった。今後は技術職の課題解決にも役に立ちたい」と意欲。サブリーダーの営業課主任・千葉優貴さん(33)は「いろんな会社で活用してもらえるのではないか。今後の自信にもつながった」と話していた。
もう一つの優秀賞には、陸前高田市の「だいわフルーツパーク気仙」で農業・観光業にデジタル技術を活用する、花巻市の大和造園土木㈱が選ばれた。
県民賞のトナリノは、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化の実現」という目的のもと、住民参加型の「スマートフォン出張講座」を気仙内外で展開。地域住民のデジタルデバイド(情報通信技術の恩恵を受けられる人と、受けられない人との間に生まれる格差)の解消に取り組んでいる。
デジタル機器の取り扱い、操作を指導する支援員の育成、高齢者らが参加しやすい小規模のサロン形式での講座開催など、地域住民に寄り添った実践的な工夫や、「デジタルへの理解度を上げた住民が、また別の住民を指導する」というサステナブル(持続可能)な考えが高い評価を得た。
担当するトナリノのICT支援員、デジタル推進委員の山本健太さん(37)によると、「講座を受けた地域の人たちが自発的にデジタルサービスを使う場面が増えるなど、目に見える成果も見え始めている」という。
受賞に対しては「私たちが行っているような活動は県内でもまだ少なく、評価をいただきうれしい。各自治体でDXが進む将来、サービスを使う地域住民が困らないよう、これからもデジタル支援の輪を広げていきたい」と語る。