インタビュー気仙2023/展望を開く② 陸前高田青年会議所理事長・熊谷晃生さん(37)

〝人づくり〟に力入れる

 

 ──陸前高田青年会議所(JC)は昨年、創立50周年を迎えた。51年目の今年、新理事長に就任した心境は。
 熊谷 昨年にJCを卒業する会員が多かったこともあり、今年は理事の顔ぶれが変わり、各委員会の委員長については全員が初の経験。そういった意味でも新体制でのスタートとなる。これまでの50年という歴史の中で、責任を持って活動していただいた理事長たちの熱意を次の世代につなげられるように、また、まちづくりに関わる自分たちもさらに成長できるように、意味のある活動を進めたいという気持ち。
 10年、20年先へと陸前高田JCの活動をつなげていくためには、取り組みが会員にとって「なんとなく」なものではなく、目的や意義を理解し、熱を入れられるものでなければならない。これからの時代は少子化が進み、世代が変わるつれて物事の考え方が多様化していく。そのことに対応できるような、新たな組織の基盤を築いていきたい。
 ──新型コロナウイルス禍の影響を受ける中、昨年は50周年記念事業にとどまらず、地元産業のPRやUターン促進などに関連するさまざまなイベントを開催した。まちづくりに関する事業を今年はどのように展開していくか。
 熊谷 主に「多様性の社会」「地域の見直し」「主権者教育」「地域資源を育てる」という四つの観点から活動のあり方を考え、地域の〝人づくり〟に寄与していきたい。
 「多様性の社会」は、障害やLGBTQ+(レズビアン、ゲイなどの総称)などの差別をなくし、みんなで分け隔てのない社会の実現を目指そうというもの。陸前高田市においては、東日本大震災後から市が地域への浸透を図ってきた「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」の考え方を生かし、多様性社会を自然に受け入れられる住民の輪を広げたい。
 一方、「地域の見直し」関係の取り組みでは、各事業所で働く大人たちが、仕事の魅力を自分たちから発信し、地元の子どもたちを育てようとする機運を高めたい。陸前高田JCでは、毎年「グッジョブけせん」という職業体験イベントを開催しているが、イベントの主体がJCにとどまっていては意味がないと感じており、今後の開催のあり方を見直していく。
 「主権者教育」は、選挙で何を頼りに投票をすればいいか分からないという若者を意識してのもの。関連して、今月25日には陸前高田JC主催で陸前高田市長選立候補予定者による公開討論会を開く。選挙に関心を持ち、自分の力で「日本を、世界を変えたい」と思えるような若者を増やすきっかけをつくりたい。
 「地域資源を育てる」は、漁業や農業などの資源そのものを磨くのではなく、資源を育てている人材を磨くという意味合い。自分の育てている作物や生産物に自信を持ち、さらにその先へ進みたいという働き手を後押ししたい。
 全体の取り組みを通じ、今いる子どもたちが憧れるような〝輝いている大人〟を増やしていきたい。
 ──組織運営に関わり改善していきたい点は。
 熊谷 陸前高田JCは陸前高田、住田の2市町がエリアになっているが、住田町での活動の場が少ないというのが現状。住田出身、在住の会員不足などが理由で、メンバーを募りつつ、「JCに入って良かった」と思ってもらえるような環境も整えていきたい。
 ──同会議所の今年のスローガン「やるなら今しかねえ~本気の一歩を踏みしめろ~」に込めた思いは。
 熊谷 目の前にある〝今〟と向き合う。また、会員それぞれの頭の中にあるすばらしい考えを共有したり、行動に移すなど形にする。きれいな言葉で飾るのではなく、まちのために、会員自ら楽しんで活動していこうという思いを込めた。
 ──今年の抱負を。
 熊谷 活動を続けていればいずれつらいことにぶつかることもあると思うが、覚悟を持ってその先に進んでいく。自分の意見を受け止め、支えてくれる会員への感謝も忘れない。答えを一つに絞るのではなく、会員が互いに魅力を引き出し合うことで、ほかの地域のJCから「あそこの会議所って雰囲気がいいよね」と言ってもらえるような組織づくりを目指す。(聞き手・阿部仁志)