インタビュー気仙2023/展望を開く④ 住田町観光協会会長・佐々木慶逸さん(67)

連携して魅力発信を

 

 ──新型コロナウイルス禍が長期化する中、昨年は3年ぶりに夏まつりが開催されるなど、町内のイベントにも動きが見られた。振り返ってみての所感は。
 佐々木 コロナ禍ということで、これまでは町民が交流する場を設けることができなかったが、昨年は各地域や各事業所の協力のもと、感染対策を徹底したうえで住田の一大イベントである夏まつりを開催し、盛況に終えることができた。
 今年も、観光協会が主体となりながら、いろいろなところの協力を得ながら開催していきたい。
 「コロナだからやらない」ではなく、なんとかしてできる方向に持っていければと考えている。
 ──観光協会として、町産食材を使った特産品の開発などフードツーリズム推進による地域活性化にも精力的に取り組んでいる。
 佐々木 令和元年度にスタートした県の新たな県民計画長期ビジョンの中に盛り込まれた「三陸防災復興ゾーンプロジェクト」の一環として、町内産の野菜を使用したソースや、㈲ありす畜産と連携し、同社の豚肉をふんだんに使った「ありすぽーく生餃子」と「ありすぽーく粗挽き肉団子」「住田カレーパン」などさまざまな商品を開発しており、多くの方から好評をいただいている。
 さらに令和2年からは、町産の鶏肉・豚肉を使用したから揚げ料理を提供することで、地域の特産食材を広くPRすることを目的とした「からあげ大作戦」も展開しており、町内外から注目を集めている。今後も新たな企画を盛り込んでいきながら、地域が活発化するようにしたい。
 これらの取り組みが、食を通じた住田のPRとともに、地元商店の活性化につながっていけば。
 ──今後の観光振興のあり方についての考えは。
 佐々木 観光においては住田単独ではなく、気仙3市町が一緒になって取り組んでいく必要があると感じる。
 住田町、大船渡市、陸前高田市はそれぞれに魅力がたくさんあるので、3市町で連携して、それぞれの魅力も発信していくとともに気仙地区を周遊するような仕組みづくりも進めていければと思っている。
 住田町は大船渡、陸前高田両市だけでなく奥州市や釜石市、遠野市、一関市と、隣接市が多く、そのすべてが魅力的な場所。周辺地域と一体になった観光振興も図っていきたい。
 また、看板の英語表記など、インバウンドに対応した取り組みも進めていきたい。
 ──協会として、新たな取り組みの展望は。
 佐々木 映像による町内の郷土芸能の保存・伝承を考えている。芸能の様子だけでなく、各団体では人手不足で指導者も減っていることから、練習方法も映像として残しておきたいと考えている。各団体の協力のもと、町教育委員会とも連携しながら保存に取り組んでいく。
 また、令和6年度には住田が誇る観光地である滝観洞の新しい受付施設がオープンを迎えるので、協会としてもPRを手伝いながら、リピーター獲得に努めていきたい。
 ──観光協会長だけでなく、自然ガイド「すみた森の案内人」の一員として、四季を通して子どもたちにも種山ヶ原の魅力を発信している。活動にかける思いは。
 佐々木 子どもたちの思い出づくりの場所になってほしいし、それとともに種山での遊びを通して自然に触れ合ってもらえれば、大人になっても自然を大切にしてくれるのではないかという一心で、案内人を務めている。
 ──観光振興に向けた今年の抱負を。
 佐々木 種山ヶ原や滝観洞、気仙川など、住田には美しい自然がたくさんある。それをPRして町外の人を呼び込みたいが、その前に、まずは住田が元気である必要がある。
 地域のみんなが生き生きとしていれば、住田に来た人も元気になってくれる。人に喜んでもらうためには、まずは自分たちが楽しめないといけない。
 地域、各団体の知恵を借りながら、元気なまちづくりをしていきたい。そのためにも、町民それぞれが得意な分野で参画してもらえればと願っている。(聞き手・清水辰彦)