「陸前高田の漁撈用具」重要有形民俗文化財に指定へ  市立博物館に収蔵 津波で被災も修復3028点

▲ 展示している「陸前高田の漁撈用具」を眺める熊谷主任学芸員

 国の文化審議会(佐藤信会長)は20日、陸前高田市立博物館が収蔵する「陸前高田の漁撈用具」3028点を、重要有形民俗文化財に新たに指定するよう、文部科学相に答申した。今後、答申通り官報告示されて指定される見通し。東日本大震災の津波で同館とともに被災したが、地元漁業者や関係機関の協力のもと回収・修復され、用具の点数を充実させた。昨年11月に開館した同館の資料が全国に誇る宝として認められた。指定されれば県内9件目となる。(高橋 信)

 

「陸前高田の漁撈用具」(陸前高田市提供)

 「陸前高田の漁撈用具」は、アワビ漁などで用いる「磯物採取用具」や海中に仕掛けて魚介類をとる「陥穽漁用具」、豊漁を祈願する「信仰・儀礼用具」など、用途や目的別に11分類で構成する計3028点。三陸沿岸のなりわいや漁業技術の変遷を知る貴重な資料となっている。
 市立博物館は昭和34年の開館当初から、地域に根ざした施設を目指し、市民から寄贈を受けた資料をメインに展示。平成7年からは世界三大漁場である三陸沿岸の地域として、漁撈用具を充実させようと、地元漁業者を民俗資料収集協力員に委嘱し、本格的に資料の収集に取り組んだ。
 平成20年には2045点が国の登録有形民俗文化財に登録された。次なる目標は、重要有形民俗文化財の指定。価値を高めるべく、地道に活動していた中、震災が起き、すべて被災した。
 回収できたのは1922点。他の被災資料同様、全国の博物館などの協力で脱塩する安定化処理をしたあと、用具を熟知する地元漁業者で、長年収集協力員を務めた村上覚見さん(故人)=広田町=らの力を借り、修復した。用具の名称や使用・制作方法など1点ずつ情報を網羅した資料カードも失ったため、漁業者から聞き取りをしたり、情報をまとめる作業もゼロからやり直した。
 文化庁によると、指定されれば全国の重要有形民俗文化財は226件となる。県内では平成15年以来20年ぶり9件目の指定。気仙では大船渡市の「大船渡のまるた」1隻が県内第1号となる昭和33年に指定されており、今回で2件目となる見込み。
 市立博物館は高田町で、津波で全壊した同市の「海と貝のミュージアム」と一体的に整備。「陸前高田の漁撈用具」は約100点を展示している。
 同館の主任学芸員・熊谷賢さん(56)は「漁業者をはじめとする市民から寄贈いただいた陸前高田の宝物が日本の宝物となった。地域の皆さんとともに喜び合いたい」と感激。「今後も地域に根ざした活動を続けていきたい」と思いを新たにした。