観光面など効果大きく 釜石─気仙沼間で1日当たり交通量2万台超 東北整備局まとめ

▲ 三陸道の全線開通によって気仙への来訪も増加(陸前高田市気仙町)

三陸道全線開通から1年余

 

 青森県八戸市から宮城県仙台市をつなぐ三陸沿岸道路(延長359㌔)の全線開通から1年余りが経過した。国土交通省東北地方整備局はこのほど、三陸道や東北横断自動車道などの整備効果や交通状況を発表。全線開通により、内陸・沿岸全域で交通量が増加。気仙を含む釜石―気仙沼間の一日当たり交通量は2万台超で、東日本大震災前に比べて約5000台増えた。広域的な道路ネットワークは本県沿岸の観光・産業に大きな効果をもたらしている。(清水辰彦)

 

 国が東日本大震災復興のリーディングプロジェクトとして整備を進めてきた三陸沿岸道路。平成23年11月に成立した国の第3次補正予算において、従前に計画、事業が行われていた三陸縦貫自動車道、三陸北縦貫道路、八戸・久慈自動車道を一本化し、「復興道路」と位置づけて急ピッチで整備。横軸となる東北横断自動車道釜石秋田線や宮古盛岡横断道路など4本の「復興支援道路」とともに、震災後おおむね10年での全線開通を目指してきた。令和3年12月、震災から10年9カ月を経て、全線が開通した。
 開通後の都市間移動時間は、八戸市─仙台市間は8時間35分から5時間13分、宮古市─仙台市間は5時間28分から3時間29分、気仙沼市─仙台市間は2時間50分から1時間59分にそれぞれ短縮された。
 昨年10月の計測で、釜石市─気仙沼市間の1日当たりの交通量は2万2800台となり、震災前の平成22年と比べて約5000台増加。県境を越えた往来も増えており、本県沿岸部の観光や産業を支えている。
 陸前高田市の道の駅「高田松原」は、昨年春の大型連休中来訪者が1日当たりで過去最高の9100人を記録。同道の駅来訪者の約7割が三陸道を利用しているといい、復興道路、復興支援道路の整備に伴って観光施設のにぎわい創出にも効果が表れている。
 また、復興道路や復興支援道路沿線市町村では教育旅行が増加し、令和3年は震災以降最多となる2506校、12万5000人となった。道路整備によって内陸部と沿岸部を周遊しやすい環境となり、震災前と比較すると三陸沿岸地域の受け入れ学校数はおよそ5倍と大幅に増えた。
 このほか、物流や工場立地支援、救急医療にも効果が表れており、今後は道路整備から「利活用」へとフェーズが移っていく。道路の整備効果をさらに波及させていくには沿線自治体単独の取り組みだけではなく、広域連携による工夫も求められていきそうだ。