記憶と教訓 後世に発信 気仙の8件を追加登録 震災伝承施設ネットワーク協議会 大船渡市魚市場や陸前高田市立博物館
令和5年2月3日付 7面

東北地方整備局や岩手県、復興庁などで構成する震災伝承ネットワーク協議会は、東日本大震災から得られた実情や教訓を伝承する「震災伝承施設」に、大船渡市魚市場や陸前高田市立博物館など気仙両市の8件を追加登録した。気仙の登録施設は累計54件となり、間もなく発生から12年を迎える震災をはじめ、過去の津波被害の記憶と教訓を後世に発信していく。(三浦佳恵)

陸前高田市立博物館では被災文化財のレスキュー事業も紹介
同協議会は、震災で被災した青森、岩手、宮城、福島各県で、震災伝承をより効果的・効率的に行うためのネットワーク化に向けた連携を図り、交流促進や地域創生、防災力の強化を図ろうと平成30年に設立。震災伝承施設の登録制度を設け、各施設をネットワーク化した「3・11伝承ロード」の形成なども進めている。
震災伝承施設の登録制度は、同年度にスタート。震災遺構、震災復興伝承館、記念碑、慰霊碑など、震災から得られた実情と教訓を伝承する施設を対象に、公募によって収集している。
登録の条件は、▽災害の教訓が理解できるもの▽災害時の防災に貢献できるもの▽災害の恐怖や自然の畏怖を理解できるもの▽災害における歴史的・学術的価値があるもの──などのいずれかに該当する施設。これに施設の設置状況などを踏まえ、第1分類(震災を伝承する施設)、第2分類(震災を伝承し、訪問しやすい施設)、第3分類(震災を伝承し、訪問と理解がしやすい施設)に分けている。
今回の追加登録施設は、1月31日に宮城県仙台市内で開かれた第10回協議会で決定。岩手県8件、宮城県と福島県が1件ずつの計10件が登録された。
本県の8件はすべて気仙の施設で、第3分類と第2分類が4件ずつ。地域別では、大船渡市が3件、陸前高田市が5件。
このうち、第3分類は▽大船渡市魚市場▽陸前高田市立博物館▽タピック45(旧道の駅高田松原)▽気仙中学校──の4件。タピックと気仙中はこれまで第1分類だったが、令和3年度に内部公開が始まったことなどを受け、第3分類に変更された。
新規登録の大船渡市魚市場は、震災の津波で壊滅的な被害を受けながらも、発生2カ月後の5月から営業を再開。平成26年に完成した新施設の展示室では、震災前後の市内の様子、水産業の被災から復興までの軌跡などを紹介し、震災の記憶や教訓を伝えている。
陸前高田市立博物館は、震災で被災した同館と海と貝のミュージアムを合築し、昨年11月にオープン。同市の自然・歴史・文化を震災の記憶とともに未来へ伝える展示を行い、過去の津波の歴史と教訓、震災で被災した文化財のレスキュー事業なども紹介している。
第2分類には、▽大船渡市防災学習館▽震災伝承看板「津波の教訓を活かした粘り強い防波堤(大船渡港湾口防波堤)」▽陸前高田市東日本大震災追悼施設▽震災伝承看板「救援ルートを切り啓いた『くしの歯作戦』(同市)」──が登録。震災の記憶と教訓にとどまらず、犠牲者らに心を寄せ、災害への備え、港湾や道路の復旧・復興にも理解を深められる場となっている。
今回の決定により、岩手県内の総登録施設は126件に。青森、岩手、宮城、福島を合わせた施設数は317件となった。