2023陸前高田市長選/激しく競り合い終盤へ  戸羽氏…実績訴え支持固め懸命 佐々木氏…攻勢強め集票に広がり

▲ 支持者と握手を交わす佐々木氏
▲ 支持者とグータッチする戸羽氏

 任期満了に伴う陸前高田市長選は、告示から6日目を迎えた。これまでの情勢は、届け出順に、4選を目指す現職・戸羽太氏(58)=高田町、無所属=と、元農林水産省職員の新人・佐々木拓氏(59)=広田町、同=が激しく競り合う展開。戸羽氏は3期12年の実績と知名度を生かして懸命に支持固めを進め、佐々木氏は現市政への批判票の取り込み、戸羽氏支持層の切り崩しを図るなど攻勢を強める。「継続か、刷新か」を問う選挙は接戦の色合いを濃くしており、支持を固めていない浮動層をいかに取り込めるかが選勢を左右しそうだ。

 

 東海新報社は1月30日から今月2日までの4日間、期日前投票の出口調査を実施。この分析と告示前からの取材を加味して終盤の情勢を探った。
 地区別では、戸羽氏が地元である最大票田の高田町(1月28日時点有権者数4216人)でリード。告示前の前哨戦終盤で集中的に展開した同町でのあいさつ回りも一定の効果があった。
 佐々木氏は2番目に多い票田で、地元の広田町(同2537人)で優勢を保つほか、米崎(同2467人)、竹駒(同1155人)の両町でも広がりをみせる。
 気仙(同1642人)、小友(同1629人)、矢作(同1193人)、横田(同1035人)各町はほぼ互角の戦い。年代別では両氏ともに70代の支持が厚く、戸羽氏は20~30代、佐々木氏は40~60代への浸透がうかがえる。
 出口調査では、5票差で勝敗が決まった4年前の前回選で、戸羽氏と新人候補のどちらに投票したかも聞いた。前回選で戸羽氏に投票した層の一定数が佐々木氏に流れている一方、前回選の新人候補への投票者が戸羽氏に流れる動きは限定的だ。
 戸羽氏は昨年9月に出馬を表明。市議9人が支持を表明している。市議時代からの後援会(丹野紀雄会長)や政治団体「あたらしい陸前高田市をつくる市民の声」(戸羽照夫会長)、現役世代有志の任意団体の3組織が連動して支えている。
 告示後は各地を遊説し、震災後のまちづくりを手掛けた経験と、市民の暮らしを守るための実現性のある公約をアピール。交流の深い自治体の首長も応援弁士として駆けつけ、これまでのつながりを生かしながら増票に励んでいる。
 陣営は支持固めに手応えを得ている半面、5票差まで迫られた前回選を教訓として、運動の上滑りに警戒を強めてきた。陣営幹部は「厳しい戦いになることは分かっていたこと。最後の最後まで油断せず、引き締めを図っていく」と話す。
 佐々木氏は昨年12月に出馬を表明。同級生や漁業関係者らでつくる後援会(菅野修一会長)は市内の町別に計8支部を構築し、同会女性部も立ち上がった。政治団体「りくぜんたかた未来を拓く会」(小松達也会長)、市議6人が支援している。
 選挙戦間近の出馬表明とあって知名度向上を命題とし、告示後は朝はつじ立ち、日中は遊説、夜は個人演説会とフル回転。農水省でのキャリアを生かした公約を訴えながら、市政刷新を求める支持者の掘り起こしに奔走している。
 告示前の総決起大会の参加者数は約400人と戸羽氏陣営よりも約50人下回ったが、告示後の第一声会場には戸羽氏陣営と同規模の約300人を集めた。勢いとともに集票を加速している。陣営の事務局は「追う立場に変わりはない。一人でも多く支持を広げていく」と見据える。
 ただ、公約などで両氏の対立軸はぼやけており、浮動層の動きが読みにくい。今後は投票先を決めかねている有権者にどう訴えを響かせるかが、勝敗の鍵を握りそうだ。
 1月28日現在の有権者数は1万5874人(男7658人、女8216人)で、4年前の前回選当日有権者数より808人少ない。前回の投票率は78・38%だった。
 投票は5日(日)午前7時から午後7時まで、前回選と同じ数の市内25カ所で行われ、同日午後8時15分から高田町の夢アリーナたかたで開票される。当落の判明は同10時ごろの見込みとなっている。
 期日前投票は4日(土)までで、会場は市役所1階市民交流スペース。時間は午前8時30分~午後8時。