2023陸前高田市長選/新人・佐々木氏が初当選 12年ぶり新リーダー誕生 1195票差 現職・戸羽氏との一騎打ち制す

▲ 初当選を果たし、万歳する佐々木氏(左から2人目)

 任期満了に伴う陸前高田市長選は5日、市内25カ所で投票が行われた。即日開票の結果、元農林水産省職員の新人・佐々木拓氏(59)=広田町、無所属=が、3期目の現職・戸羽太氏(58)=高田町、同=に1195票差で破り、初当選を果たした。同省での36年間の経験に基づき打ち出した政策が有権者に響き、3期12年の実績と知名度を誇る現職との一騎打ちを制した。東日本大震災後のインフラ復旧が完了し、ポスト復興のまちづくりにかじを切る同市に、12年ぶりに新リーダーが誕生した。投票率は79・36%と、4年前の前回選を0・98㌽上回った。(7面に関連記事)


投票率は79・36%


 投票は同日午前7時から午後7時まで行われ、同8時15分から高田町の夢アリーナたかたで即日開票された。同9時時点の中間発表は、

佐々木、戸羽両氏ともに1400票、同9時30分時点では4400票で並び、開票結果を待つ両陣営の事務所には緊張感が広がった。
 最終確定票は、佐々木氏6843票、戸羽氏5648票。勝利の女神は「復興の先にかじを切れ」をキャッチフレーズに掲げ、市政刷新を訴えてきた佐々木氏にほほ笑んだ。
 佐々木氏は昨年12月、農水省を退職して出馬を表明。同級生や漁業関係者らでつくる後援会(菅野修一会長)は、地元・広田町から市全域に活動を広げようと、町別に計8支部を構築し、同会女性部も立ち上げた。政治団体「りくぜんたかた未来を拓く会」(小松達也会長)、市議6人の支援を受けた。
 約40年間陸前高田市を離れ、知名度不足が最大の課題だった。出馬表明後、まずは広田町からあいさつ回りに取りかかり、「市民に顔を覚えてもらう」ための草の根的な活動を展開してきた。
 日中のあいさつ回りのほか、夜のミニ集会、朝のつじ立ちなど段階的に活動を増やした。
 農水省で36年間働いた経験と人脈を生かして打ち出した公約は▽大学誘致▽4年間で雇用1000人創出▽4年間で農林水産業の生産額倍増──など。徐々に支持を拡大し、告示後の遊説などで勢いをさらに加速。現市政に対する批判票の取り込み、戸羽氏支持者の切り崩しを図るなど攻勢を強め、競り合いを制した。
 一方、戸羽氏は昨年9月に立候補を表明。市議時代からの後援会(丹野紀雄会長)や過去の市長選で戸羽氏を支持してきた政治団体「あたらしい陸前高田市をつくる市民の声」(戸羽照夫会長)のほか、新たに現役世代有志の任意団体「戸羽太を応援する仲間たちU─50」(岩﨑順一代表)が加わり、3組織が連動して支援。さらに市議9人が支えた。
 新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大人数を集めた集会を控えた代わりに、従来からの組織力を生かして力を入れたのが情報発

信。震災後のまちづくりを手掛けた実績や今後の重点政策をまとめたチラシを頻繁に作成し、インターネットでの発信にも意を注いだ。

 「次の4年を集大成としたい」と市政継続を懸命に訴えながら、逃げ切りを図ったが、勢いを増す佐々木氏に競り負け、4選とはならなかった。
 投票率は前回選(平成31年)の78・38%に比べ、0・98ポイント高くなった。告示日翌日の1月30日から今月4日まで行われた期日前投票の投票者数は4125人で、前回選を1290人上回った。

 【佐々木拓氏の略歴】
 昭和62年、農林水産省に入省。在ロシア日本大使館一等書記官や石川県農林水産部次長、水産庁九州漁業調整事務所長、同庁漁政部参事官などを歴任し、令和4年退職。
 昭和38年10月24日、広田町生まれ。59歳。東京水産大(現・東京海洋大)卒。広田町字田端42の3。