佐々木拓新市長に聞く 現場の声 市政に反映 大学・企業誘致を推進 自治体間連携にも意欲

 5日に投開票された陸前高田市長選で初当選を飾った佐々木拓氏(59)が、13日(月)から1期目の任期に入る。選挙の所感や公約の展望、新市長としての抱負などを聞いた。


 ──現職に1195票差をつけて勝利した。
 佐々木 約40年間このまちを離れていて、最初は地元の広田町ですら知名度が低く、『広田出身です』とあいさつしても、約半分は『知らない』という状況だった。そこから支援者や同級生の働きかけで支持を広げていただいた。選挙戦最終日、広田での演説時は一番強く応援の声をいただき、大変元気をもらった。
 市内全域で『自分も広田だ』という出身者は多く、とても心強かった。つじ立ちなどするうちに手を振ってもらったり、声をかけてくれる人が増え、少しずつ認知されてきたのかなと感じた。
 あいさつ回りやミニ集会をする中で、復興事業が終わった一方、子どもが減り、『このまちは今後どうなるのか、衰退するのではないか』との不安の声を聞いた。行財政運営に関する不安や『今の市政を変えて』という意見も多く、しっかり応えないといけない。
 ──市長として生かしたい強みは。
 佐々木 昨年12月まで働いた農林水産省は、農林漁業者の声を聞き、施策を決める役所だった。現場の声を市政に反映させたい。
 市民から「頻繁に意見交換したい」という要望もあった。四半期に1度程度、市民との対話の機会を設けたい。定例記者会見が年に4回しかないと聞き、月に1回は開催できればいい。私のやろうとしていること、考えていることを積極的に発信したい。
 ──公約の企業誘致や大学誘致は市民の期待も大きい。
 佐々木 陸前高田市に関心を持っている企業はあり、就任後、アプローチを始めようと思っている。選挙戦ではこのまちで生まれ育った子どもが、このまちで働き、活躍できるよう支援する「人財」育成を掲げた。若い市出身者が憧れるようなIT関連企業の誘致を進めたい。
 大学は、あえて具体的な名前を出したり、イメージを明確化せず、いろいろな可能性を探りたい。テクノロジー的な大学や国際的な研究者が学べる学部を誘致できれば、ILC(国際リニアコライダー)の誘致にも絡んで面白いなと思っている。
 かさ上げ地の空き地は、私有地と市有地がまだら状になっていて、まとまったスペースが取りにくいと聞く。誘致に向けて広い土地を使いやすくするための制度改正は不可欠。いろいろな人に理解を求めながらやっていきたい。
 ──農林水産業の生産額倍増も訴えてきた。
 佐々木 伸びしろが一番あるのは、これまで震災復興のためあまり手が入っていなかった林業だ。やるべきことがたくさんあると思っている。6月にある全国植樹祭を一つの契機にしながら、森林環境の整備を進める。
 水産に関しては、サケの不漁や貝毒の問題に研究者や大学などと対応していきたい。漁業者のなりわいに関わることであれば、国や県などの所管であってもどんどん口を出していく市長でありたい。ふるさと納税は「自分の生産物を返礼品として扱ってほしい」と漁業者から相談を受けており、生産者、加工業者双方に恩恵が行き渡るような方向に持っていきたい。
 ──他自治体との連携に関する考えは。
 佐々木 陸前高田と一関を結ぶ国道343号の新笹ノ田トンネルや高規格道路の整備は、自治体が連携し、みんなで本気にならないと実現しない。県央へのアクセスが良くなるのは、通勤圏拡大、利便性向上につながり恩恵が大きい。市民のためになることは一生懸命やる。(聞き手・高橋 信)