ラストランに向け採火 6月運行終了のSL銀河 「ものづくりの灯」(釜石)から JR盛岡支社(別写真あり)
令和5年2月21日付 7面
JR東日本盛岡支社は20日、釜石線(花巻―釜石間)で運行し、気仙では住田町の上有住駅に停車する「SL銀河」の点火用種火の採火式を釜石市の釜石駅「鉄のモニュメント」前で行った。モニュメントにともる「ものづくりの灯」から採火。平成23年の東日本大震災で消えるも同年に再びともったこの火へ、震災復興への思いを重ねて〝ラストラン〟へと向かう。(清水辰彦)
きょう盛岡で火入れ式

6月で運行終了となるSL銀河
釜石駅前にある「鉄のモニュメント」は平成19年、近代製鉄発祥150周年を記念して設置された。以来、新日鉄釜石製鉄所の高炉から移された火が24時間ともっていた。駅前が津波で浸水。ガスの供給などが止まったため消えていたが、23年12月、同製鉄所構内で保存していた高炉の火を点火してよみがえった。
採火式では、トーチに移した「ものづくりの灯」を、JR釜石駅の髙橋恒平駅長(43)がランタンにともし、盛岡車両センターの本倉幹弘所長(49)に手渡した。この火は21日、盛岡市にある検収庫におけるSL銀河への火入れ式で種火として使用される。
「ものづくりの灯」の使用は、SL銀河運行開始の平成26年以来。同年は、震災で甚大な被害を受けた沿岸地域の復興支援を体現しようと採火。運行最終年となる今回も、「沿岸エリアとの絆をもって運行していきたい」との思いから釜石で採火した。
SL銀河は、宮沢賢治の作品「銀河鉄道の夜」をモチーフに改修した機関車と4両編成の旅客車で構成。定員は176人で、26年4月にデビュー。
使用されている機関車は、昭和47年まで山田線、釜石線、大船渡線を中心に運行し、その後は県営運動公園で展示・保存されていたものを復元。旅客車は、JR北海道で客車を改造したものを譲り受けた。急勾配のある釜石線でも運転できるようエンジン付きの客車となっている。
SL銀河運行開始に当たっては、機関車の復元や旅客車整備、沿線線路の整備や機関士の養成など、総額約20億円を投じた。運行開始以来、主に春から初冬にかけて土日を中心に花巻駅─釜石駅間を運行。運行開始から令和4年12月までにおよそ7万人が乗車しており、全国の鉄道ファンたちに愛されている。
これまで定期検査しながら運行してきたが、40年余り前の車両をベースとする旅客車は部品調達が困難となっていることから、定期運行は今年6月3(土)、4(日)の両日で終了し、同10日(土)、11日(日)の団体臨時列車が最終運行となる予定。旅客車は廃車が予定され、機関車は当面の間、検収庫に置かれ、今後の活用を検討するとしている。
気仙で唯一のSL銀河停車駅である上有住駅では、毎年の運行開始時には町や観光関係団体による歓迎行事が催されており、五葉山火縄銃鉄砲隊、町のPRキャラクター・すみっこらによる「おもてなし」が続いてきた。令和2年3月には、東京五輪の聖火を東日本大震災の被災地でともす「復興の火」を沿岸部へ運ぶ役目も担った。
昨年は4月9日に運行開始となり、その姿を一目見ようと町内外から見物客らが訪れ、運行日には駅周辺が活気づいた。
髙橋駅長は「震災復興の象徴として平成26年から運行していたSL銀河は、今年がラストシーズンとなる。上有住駅でも停車するので、最後の勇姿を多くの人たちに見ていただきたい」と話していた。
今期のSL銀河は、3月25日(土)に運行スタート。以降は主に、土曜日に往路(釜石行き)、日曜日に復路(花巻行き)を走らせる。






