うどんも絆も太く強く 12年ぶり来県 、気仙も訪問 香川で製麺所営む三好さん 震災直後から被災地支援

▲ 12年ぶりに被災地を訪れうどんを通じて生まれた絆を深めた三好さん(前列右から3人目)=大船渡温泉

 香川県坂出市の老舗うどん店㈲日の出製麺所代表取締役の三好修さん(58)は2、3の両日、大船渡、陸前高田両市を訪れ、復興状況を見学した。東日本大震災発災直後に釜石市でうどんの炊き出しを行い、その後も被災地に向けてうどんを送り続け、今回が12年ぶりの被災地訪問。宿泊した大船渡市大船渡町の大船渡温泉では、三好さんがうどんを提供した末崎、赤崎両町の仮設住宅の元住民らとも交流し、支援活動を通じて生まれた絆への感謝を伝え合った。(菅野弘大)

 

 三好さんは、震災発生直後の平成23年4月、本場さぬきうどん協同組合の支援活動の一環で、釜石市でうどんの炊き出しを実施。被災地の惨状に心を痛め、後ろ髪を引かれる思いで香川へと帰る途中、たまたま立ち寄った北上市の農家レストラン「さん食亭」(髙橋靜雄代表)で、山積みになった支援物資を目の当たりにした。
 「この物資を毎週被災地に届けている」という髙橋代表(79)の言葉に、三好さんは「自分が被災地に来られなくても、ここならうどんを届けてもらえるかもしれない」と思い立ち、そこから毎年うどんを送り、髙橋代表が被災地に届けたり、炊き出しを行うなどして支援の輪を広げてきた。
 大船渡市では、各地にうどんを届けて回っていた髙橋代表が末崎町の仮設住宅を訪問した際、仮設住民の世話人をしていた新沼利雄さん(71)とのつながりが生まれ、交流がスタート。新沼さんの紹介で、同町だけでなく、赤崎町の大立応急仮設住宅でも炊き出しを行い、うどんの寄贈のほか、仮設住民がバスで「さん食亭」を訪問するなど、地域を超えた絆を深めている。
 今回は、新型コロナウイルスの感染状況をみて、三好さんが妻の和子さん(53)とともに岩手を訪れ、2日は髙橋代表の案内で被災した大槌町や炊き出しを行った釜石市の復興状況を見ながら南下。大船渡市で1泊し、3日は陸前高田市の奇跡の一本松などを見学した。
 宿泊先の大船渡温泉には、新沼さんをはじめ、末崎、赤崎両町の仮設住宅の元住民らが、三好さんや髙橋代表に感謝を伝えようと集まった。大立仮設自治会長を務めた金野正博さん(76)は「温かいうどんはおいしくて、ありがたかった」と振り返った。
 新沼さんも「さぬきうどんはなかなか食べられるものではなく、みんな喜んでいた。12年がたってもこうして支援を続けていただき、三好さん、そして仲介してくれた髙橋さんに感謝している」と思いを語った。
 三好さんは今年も支援のうどんを届けた。髙橋代表は「これは〝支援のうどんリレー〟だ。12年ぶりに会えて、本当にうれしい」と笑顔。
 三好さんは「自分が来ることで、震災を思い出させてしまうかもしれない」と悩んだというが、「何から何までおんぶに抱っこで手配していただき、12年前に見た状況からは想像できない新しいまちを見ることができた。今後もうどんを送りつける形になってしまうが、ご支援を続けさせていただければ」と思いを寄せた。