巡り続ける縁に感謝 福岡の阿部さんと気仙住民 大船渡で交流 沖縄の歌手によるコンサートも

▲ 気仙での交流を続ける阿部さん(最後列右端)と、前里さん(前列左から3人目)、柳下さん(同4人目)

 福岡県の浄土真宗本願寺派・西楽寺の前住職で、東日本大震災後から気仙に通い続ける阿部俊之さん(70)は12日、大船渡市盛町の日本キリスト教団大船渡教会で気仙の住民と交流した。阿部さんの縁で、沖縄県の歌手・前里秀美さん(50)によるコンサートも開催。会場に駆けつけ、阿部さんと毎年のように顔を合わせているという陸前高田市高田町の柳下咲子さん(70)は「今も気仙を気にかけ、人の縁を広げていただいていることがありがたい」と巡り会いに感謝した。(阿部仁志)

 

 コンサートには、阿部さんと顔見知りの気仙住民やその知り合いなど約30人が来場。過去に、気仙ゆかりの歌手の千昌夫さんや新沼謙治さんと同じステージに立ったことがあるという前里さんは「東北で自分にできることをしたいとずっと思っていた」と初の気仙入りを喜び、沖縄の民謡『てぃんさぐぬ花』やオリジナル、カバー曲など約10曲を歌った。
 温かく伸びやかな歌声が教会に響くと、観客はうっとりとした表情に。「みなさまの気持ちが穏やかになりますように」という祈りがこめられた歌で心を癒やした様子だった。
 前里さんは「東北に行くタイミングをなかなかつかめていなかった中、北九州で阿部さんと会う機会があり、十三回忌の今年に合わせて同行させていただいた。今日みなさんと会い、歌を聞いてもらうことができてよかった」と話していた。
 阿部さんは、震災が発生した平成23年から気仙に入り、遠野市の被災地支援団体・遠野まごころネットを通じてボランティア活動を展開。ワゴン車を運転して仮設住宅を回り、買い物や温泉に行きたい住民を送り迎えする無償の支援も自主的に行った。
 気仙両市の復旧・復興事業が進み、住民が仮設住宅から災害公営住宅などへ生活拠点を移したあとも、毎年気仙両市を訪問。再会した住民に笑顔を届け、前里さんのような新しい人との縁も広げ続けている。
 柳下さんは、県立高田高校の敷地に建った仮設住宅に暮らしていたときに阿部さんと出会った。「とても気さくな人で、仮設の住民とか関係なくいろんな人たちの中にすぐ溶け込んでいた。たくさんのものをいただき、私も救われた」と振り返る。
 昨年ぶりに阿部さんと会い、「ここまでつながりが続くとは、当時は思っていなかった。毎日会うわけじゃないけど、気にかけてくれているということが分かると、心が温かくなる」と笑顔を広げた。
 阿部さんは「気仙への訪問は今回が37回目。震災のことや、みなさんとの出会いをずっと忘れない。これからも一緒に歩んでいきましょう」と寄り添っていた。