若年層の低さ浮き彫り 昨秋の市長選年代別投票率 80代以上も伸び悩む

 大船渡市選挙管理委員会(佐々木一郎委員長)は、昨年11月27日に投開票が行われた市長選における年代別の投票率をまとめた。全体の投票率は67・48%で前回選を6・43ポイント下回り、過去2番目の低さとなった中、特に19~29歳が40%未満と低調ぶりが際立った。高校3年生の18歳と30代に加え、80代も伸び悩んだ。若年層への政治や選挙に対する関心喚起に加え、投票所までの移動手段確保の課題がうかがえる。今年は県知事選や県議選が控えており、投票率向上に向けた取り組みが注目される。(佐藤 壮)

 

投票率が過去2番目の低さに終わった大船渡市長選の開票作業(昨年11月27日)

 昨年の市長選は、昭和27年の市制施行から数えると通算20回目。三陸町との合併後は6回目、東日本大震災後は3回目。現職が勇退し、過去最多の新人5人による激戦が展開された。
 初めてコロナ禍での市長選となり、各陣営とも室内での大規模な集会を見送るなど、感染防止を最優先しながら選挙戦を展開。市選管でも、各種選挙での経験を生かしながら、投票会場の感染防止を徹底し、投票を呼びかけた。
 これまでにない構図で市内外から注目を集めたが、投票率は過去最低だった平成26年の67・34%をわずかに上回る67・48%に終わった。投票に行かなかった有権者は約9530人で、7578票だった当選者の得票数を上回った。
 男女合わせた投票率(カッコ内は投票者数)は▽18歳=55・19%(133人)▽19~29歳=39・41%(927人)▽30~39歳=58・67%(1597人)▽40~49歳=64・18%(2457人)▽50~59歳=72・64%(3364人)▽60~69歳=79・42%(3986人)▽70~79歳=79・95%(4381人)▽80歳以上=58・19%(2926人)──となった。
 29歳以下の投票者の合計は1060人。全体の投票者数(1万9771人)に占める割合は、わずか5・4%だった。
 特に19~21歳の投票率は25%前後で、年齢ごとの投票者は50~52人。関心の低さに加え、住民票は市内にありながら、進学や就職で市外に離れている層が一定数いるとみられる。
 年齢が上昇するにつれて投票率は上昇し、20代後半から投票率は50%を超えた。それでも30代、40代は60%を超えず、全体投票率を下回った。
 49~81歳では、各年齢とも全体投票率を上回り、特に60代と70代の各年齢はいずれも75%超となった。74歳は83・13%(542人)、73歳は82・54%(553人)で、この年齢層だけで10~20代の投票総数を上回った。
 若い世代の低調ぶりは、市政への関心の低さに加え、市長職や候補者本人に対する認知、情報不足などが要因とされる。こうした傾向が続けば、若者が抱える思いやアイデアが政治に生かされにくい状況にもつながりかねない。
 若年層だけでなく、82歳以上の投票率も、男性は62・66%、女性は48・84%と伸び悩んだ。各投票所まで向かう際の移動手段確保といった課題も浮かび上がる。
 今年は9月10日の任期満了に伴う知事選、県議選が控える。いずれも、競争選挙の見通しとなっている中、投票率の行方が注目される。さらに、来年春には市民にとってより身近な市議選も行われる。
 佐々木委員長は「投票率向上に特効薬はなく、立候補者の顔ぶれにも左右される面はあるが、10代や20代の啓発活動は大切。『選挙にいこう』という呼びかけよりも『将来を考えよう』という投げかけなど、工夫も求められる。市民自らが市政を身近に感じ、チェックする意識の醸成に向け、疑問や関心に対して行政側が積極的に応える体制も重要ではないか」と話している。
 年代ごとの男女別投票率は別掲。