歴史語り継ぐ意義再確認 戦争経験者との対談実施 学生団体のpeace&voice 世界平和への思いも新た

▲ 戦争経験者の伊藤さん㊥から当時の状況を聞く団体メンバーら

 戦争の記憶を後世に語り継ごうと、県立大船渡高校の生徒らを中心に構成する学生団体「peace&voice」(小林友香代表)は14日、大船渡市内で戦争経験者との対談を行った。終戦から77年が経過し、ロシアのウクライナ侵攻も続く中、「戦争は絶対にしてはならない」という経験者の声に、メンバーらが世界平和の実現に向けた思いと、語り継ぎの意義を再確認した。(菅野弘大)

 

 同団体は、小学生のころに曽祖母から戦争の体験談を聞いた小林代表(18)が、「世界から戦争をなくしたい」と、大船渡高2年時の令和3年9月に設立。戦争経験者と自分たちの〝声〟をつなぎ、未来に戦争の経験、記憶を語り継ぐことで世界平和の実現を目指そうと、大船渡高生と県外の高校、大学生で活動している。
 団体活動の柱ともいえる戦争経験者との対談は、設立から1カ月後の同年10月から行っているもの。地元や国内外の戦争経験者または関係者の話を聞く機会を設け、教科書では語られることのない〝生の声〟から、戦時中の様子について理解を深めている。
 同日は、同市赤崎町の伊藤公子さん(81)との対談が実現。団体からは、小林代表とリモートも含めたメンバー4人が参加した。
 伊藤さんは、太平洋戦争が開戦する4カ月前の昭和16年8月、中国の撫順市で4人きょうだいの三女として生まれた。満州鉄道の発電所に勤めていた父を持ち、6歳まで戦争真っただ中の中国で過ごした。ソ連の侵攻に伴う一斉引き揚げで日本へと戻り、家族で全国を転々としながら、自身は結婚を機に大船渡へ。長年、保育士として子どもたちの成長を見守ってきた。
 「飛行機が飛んできて爆弾を落とすことはなかったが、空襲警報を受けて防空壕に避難した記憶がある」「兵隊が家に入ってきて居座り、いろんなものを取られた」と幼少期を振り返った。「母と弟と昼寝をしていると、銃を持った兵隊が家に踏み込んできた」「リンゴを買いに行ったら銃を持った兵士に遭遇し、遠回りして逃げた」など、幼いながらも記憶に残る戦争の実体験を伝えた。
 日本へと向かう引き揚げ船内の様子や、両親の身内を頼って暮らした生活の状況も語り、食糧難の時代に日本へとやって来たため、よそ者扱いを受けたこともあったが、「私たちの姿を見かねた隣のおばちゃんが食べ物をくれた。他人さまからの親切が身に染みた」と、人の温かさに触れたエピソードも紹介した。
 現在の世界情勢について「なぜ人間は同じことを繰り返すのか。恨んでは返すの繰り返し。切ないね」と悲しげに語った伊藤さん。「若い皆さんが戦争に関心を持ってくれた。戦争を絶対に繰り返してはならない。皆さんが語り継いでいってほしい」と、団体の今後に期待を込めた。
 小林代表は「さまざまな戦争経験者の方とお話しするたびに、『戦争をしてはならない』と強く思う。伊藤さんとの対談で、さらに気になった歴史もあった。春から大学生となるが、平和な世界をつくるために、メンバーと協力して地道に少しずつ活動を続けていきたい」と話していた。