震災忘れず「次」に備え 陸前高田の教訓と現状発信 名古屋で「絆の日」記念行事 市民交流の成果も披露 (別写真あり)
令和5年3月21日付 7面

陸前高田市の友好都市である愛知県名古屋市は18日、同市東区のオアシス21で「絆の日(3月23日)記念交流イベント」を開いた。陸前高田の紹介や物産の販売、両市の交流にまつわるステージが繰り広げられたほか、中学生時代に陸前高田を訪れたことがあるメンバーで結成された「絆交流teamS(チーム・エス)」や、名古屋市大学生消防団らが、東日本大震災の教訓と命を守るための取り組みを発信。名古屋でも想定される南海トラフ巨大地震への備えを市民に啓発する機会とした。(鈴木英里)
同日は、陸前高田市出身のパーカッショニスト・はたけやま裕さんと、歌手の佐藤竹善さん(シング・ライク・トーキング)がオープニングに登場。はたけやまさんは被災マツで作った打楽器カホンを奏で、古里への思いを伝えた。
会場には陸前高田市の画家・田﨑飛鳥さんの絵画展、フォトジャーナリスト・安田菜津紀さんの写真展、物産販売ブースなども設置。名古屋市大学生消防団による救急救命の講習コーナーは、親子連れなども参加して大いににぎわった。
名古屋市防災アンバサダーのSEAMOさんはスペシャルライブを、同市出身のタレント・須田亜香里さん(元SKE48)は大学生消防団との防災トークセッションを通じ、日ごろから備える大切さをPR。陸前高田と名古屋の交流記念踊りとして創作された『いこまいたかた、あばっせなごや』や、気仙町の「けんか七夕太鼓」披露など、両市の絆を確かめ合うステージも繰り広げられた。
舞台では、両市の中学生による「絆交流」に参加した生徒らで結成されたチーム・エスの発表も。メンバーは、中学時代と昨年夏、陸前高田を訪れた際に見聞きした話を踏まえて、「津波てんでんこ」の考え方などを紹介し、防災・減災においては一人一人の意識が重要であると訴えた。
名古屋市立菊里高校3年の山本都葵さん(18)は「中学の時に陸前高田を訪れた経験から、得られたものがとても大きかった。防災について伝えていくには知識を身につけなければいけないし、もう一度行って直接いろんなことを感じたいと考え、チーム・エスに参加した」といい、「以前は〝被災地応援〟という面が強かったが、今では市と市が対等な関係性になってきたと思う。中学生が学ぶべきことも多く、ずっと交流を続けてほしい」と語った。
県立名古屋西高校3年の高橋慶さん(18)も「チームのメンバー一人一人が、学んできたことを自分のコミュニティーの中に還元していければ、防災の輪は少しずつ広げられるのでは。大学生になっても周囲の人たちに伝え続けていきたい」と意気込みを述べた。
また、けんか七夕太鼓のステージに出演した黄川田大雅さん(25)=矢作町=は、「陸前高田とは距離が離れているのに、こんなふうに思い続けてもらうのはすごい。『おかげさまで元気にやっています』と示せるように太鼓をたたきたい」と話していた。
名古屋市は震災を機に、陸前高田市の行政全般を支援する独自の取り組みを展開し、これまでに延べ250人を超える職員を派遣。両市教委は平成24年5月に絆協定、両市は26年10月に友好都市協定を締結した。令和3年には職員が東日本大震災直後に初めて陸前高田市入りした3月23日を「絆の日」と定めた。
イベントは「奇跡の一本松」の後継樹が植樹された名古屋市の東山動植物園で、23日(木)にも実施。NPO法人桜ライン311代表理事の岡本翔馬さんによる講話、消防音楽隊の演奏、庭師でタレントの村雨辰剛さんのトークショーなどが行われる。