新防災システム運用へ  市議会3月定例会最終本会議 新年度予算案など可決

▲ 新年度予算などを可決した最終本会議

 陸前高田市議会3月定例会は20日、最終本会議が開かれ、予算等特別委(鵜浦昌也委員長、議長を除く全議員で構成)に審査が付託された新年度予算案6件と同日追加提案された発議2件を原案通り可決し、閉会した。5年度は、事前登録した電話への防災情報伝達と、AI(人工知能)を活用した安否情報確認の新システム導入・運用を計画している。(清水辰彦)

 同日可決されたのは新年度一般会計予算と、国民健康保険・後期高齢者医療・介護保険の各特別会計予算、水道・下水道の両事業会計予算に加え、議会運営委員会(委員長・菅野広紀議員)の発議「市議会委員会条例の一部を改正する条例」や、産業建設常任委員会(委員長・鵜浦昌也議員)の発議「東京電力福島第一原子力発電所におけるALPS処理水の海洋放出に係る意見書」の衆参両議院議長、内閣総理大臣らへの提出。
 新年度の一般会計当初予算は158億2700万円で、現年度当初比11億7900万円(6・9%)減。東日本大震災後に編成した平成24年度当初以降で最小規模。減額は令和元年度当初から5年連続となる。
 新規事業は50事業計4億9507万円で、防災対策、土地の利活用促進、交通確保対策、交流人口拡大などの関連経費を計上している。
 新規事業のうち、オートコールによる防災情報システムの構築業務委託料には199万2000円を計上。
 オートコールは、市が新年度から運用開始する全国初となる情報発信方法。事前に市民が電話番号を登録することで、避難情報などが発令された際に自動で電話をかけるもの。機械音声が市からの避難指示などを伝える。携帯電話だけでなく固定電話にも対応する。NTT東日本などと協力し、昨年3月に下矢作地区の防災訓練、同10月の県と合同での総合防災訓練でも実証試験を行ってきた。
 AIを活用した電話応対も可能とし、電話番号登録者が避難完了したか、どこに避難しているかなどをAIが判読して災害対策本部に文字化した情報を伝達できるようにする。今年夏ごろには電話による情報伝達の運用を開始し、年度内にさらに発展させていく考え。
 また、学校給食費の無償化にも乗り出す。給食費は小学生が年間4万8060円、中学生が同5万6140円で、4月からの無償化を目指している。
 土地利活用広報業務(予算額200万円)、土地利活用看板設置費(同500万円)、土地利活用バンク仲介手数料支援金(同150万円)などは、5年度から建設部内に新設する「土地活用推進課」が担う。
 同市の復興のシンボルで、高田松原津波復興祈念公園内にそびえるモニュメント「奇跡の一本松」の保存状態を確かめる調査を初めて実施する。事業費は308万円。幹の中のCFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の芯材をつなぐスチール製の接続部が腐食していないか秋ごろに調査する。
 昨年10月以降、県交通㈱の陸前高田住田線(30・5㌔)の休日便が運休している状況を踏まえ、4月から毎週土曜日に代替便を1日2往復させる。運行関連費は陸前高田市と住田町が負担し、5年度の同市分は約100万円を見込む。
 交流人口拡大事業の一環で、小友町のオートキャンプ場モビリアの指定管理者への補助を行う。同キャンプ場は5年度のリニューアルオープンを予定しており、アウトドア活動の推進を後押しする。
 一般会計予算案にかかる賛成討論では、木村聡議員(翔成)が5年度新規事業などを評価したうえで「これまでの事業をゼロベースで見直し、今の時点で効果性が低いものは削減していただきたい。市長の公約実現にあたっては、政策効果の裏側にあるデメリットまで想定して議会での議論を」と注文。
 加えて「市内の力を活用し、育成することにも目を向けてほしい。議会での議論を踏まえると、市長の政策実現の根拠は国など外部の方々とのパイプを強調していた印象。そこには期待するが、地域の持続的な発展には、課題の発見、アイデア出し、実行も、地域のプレーヤーとともに行い成長していくことが重要。ともに10年、20年先の本市の未来を見据えて議論をしていけたら」と述べた。
 また、大坪涼子議員(日本共産党)も賛成討論に立ち、前市長時代に展開されてきた被災者支援事業を取り上げて「市民に寄り添い、困っていることに全力を挙げてきた12年間の積み重ねが、今回の予算にも反映されている」とし、学校給食費完全無償化、補聴器購入補助が予算化されたことを評価。「これらの取り組みはこれから県内に広がっていくのではないか」と期待を込めた。
 反対討論はなく、各予算は原案通り可決された。

 

舟波副市長が退任あいさつ/全協で

 

 陸前高田市議会本会議終了後、全員協議会が開かれ、本年度末で退任する舟波昭一副市長があいさつした。
 舟波副市長は、北海道大学大学院工学研究科修士課程を修了し、平成21年4月に国土交通技官として入省。
 23年に警察庁交通局交通規制課規制第二係長、25年に道路局高速道路課高速道路係長、26年に東北地方整備局山形河川国道事務所調査第二課長、29年に同局道路部道路計画第一課長を歴任し、令和2年度から陸前高田市副市長を務めている。
 舟波副市長は「3年間はあっという間だった。昨年、復興事業のハード整備は終わったが、この大切な期間を議員、市民、職員の皆さんと過ごせたことをうれしく思う」と感謝を示した。
 主に公共交通関係の事業に深く関わったと振り返り、「国交省で経験したことのないようなうれしさがあった。この3年間でいただいた多くのことを胸に、国交省に戻ってからも頑張りたい。どこにいても陸前高田市を応援させていただきたい」と述べた。
 舟波氏の退任に伴い、4月から当面、副市長は不在となる。報道陣の取材に対し、佐々木拓市長は「後任についてはまだ未定。令和5年度の予算執行、次の議会対応、私の公約実現にかかる補正予算などを検討していくうえで、どのような方がふさわしいのかを考え、なるべく早く人選を進めたい」と語った。