「悩みの種」一転 活用を ワカメ養殖の情報発信へ サンコー食品で活動中の大学生 ニュージーランドの先住民向けに

▲ 今が最盛期のワカメ刈り取り作業などを撮影

 大船渡市大船渡町のサンコー食品㈱(小濱健代表取締役)でインターンシップ活動を行う大学生たちが、ニュージーランド南島の先住民・マオリ族の一部族である「ナイタフ」向けに、大船渡でのワカメ養殖の映像を送ろうと撮影や編集を進めている。現地では外来種であるワカメの繁殖が悩みの種となっており、日本での作業をヒントに、今後の対策につなげてほしいとの思いから行動。4月中の完成・送付を目指している。(佐藤 壮)

 

動画の編集作業にあたる本間さん㊨と荒木さん

 現在、活動を行っているのは、新潟県立大学2年の本間奈桜さん(20)と公立鳥取環境大学3年の荒木千尋さん(21)。NPO法人による実践型インターンシップの一環で、先月から同社やオンラインを通じて、同社の主力事業であるイカ加工品の販路開拓やSNSでの発信に取り組んでいる。
 同社は東日本大震災以降、同法人wiz(中野圭代表理事、大船渡市)などが担うインターンシップを通じて、国内外の大学生約20人を受け入れてきた。学生ならではの視点を生かしたプロジェクトを設けてきた中、今回新たに、ニュージーランド南島で課題となっているワカメの取り組みを加えた。
 ワカメはアジア圏では身近な食材である一方、南半球のニュージーランドでは食用利用が進まず、在来種や地場産業に悪影響を及ぼす一種とみられている。同社では活用も視野に10年ほど前から現地関係者と協議を重ねてきたが、生活文化の違いやコロナ禍などもあり、事業化には至っていない。
 現地で塩蔵加工が可能となれば、消費国への輸出による産業面での波及効果だけでなく、駆除の費用確保に充てるといった流れの構築も考えられる。
 今回は、本間さんが中心となって現地関係者らと打ち合わせを進め、大船渡をはじめ三陸産ワカメの養殖や加工から、ヒントを見いだしてもらおうと映像制作を始めた。
 今月18日には、三陸町綾里で養殖を営む漁業者の協力を得て、漁船に同乗してワカメの収穫作業を撮影。岸壁に戻っての湯通し作業などにも立ち会ったほか、漁業者から養殖に関する資料提供も受けた。
 今回のインターンシップ期間は24日までだが、4月以降も英語の字幕を付けるなど動画編集を進める。イカ加工品の販路開拓を中心に進めてきた荒木さんや、これまで同社でインターンシップを重ねてきた〝先輩〟の協力も受ける。
 事業に乗り出す場合は、中古設備を送るといった支援も視野に入れる。本間さんは「ワカメ養殖は労力がかかるが、地域の連帯感が強く、まち全体で進めていると感じた。動画を目にしてもらうことで、判断やきっかけの一つとしてほしい」と話す。